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鉄よりも強くアルミよりも軽い炭素繊維は今後、自動車産業への利用が有望視されている。しかし、普及に向けては加工の難しさやスピードがネックとなっており、新たな技術開発が喫緊の課題だ。そこで、北鉄工所が挑戦するのが、熱可塑性を有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のプレス加工技術の確立である。
ちなみに熱可塑性とは、加熱すると軟化して成形しやすくなり、冷やすと再び硬くなる性質のこと。現在の主流であり、一度硬化すると熱しても変形しない熱硬化性CFRPに比べ、プレス加工に適している。
プレス加工技術の研究を前に、目下、同社が取り組んでいるのは、プレス加工に必要となる熱可塑性CFRPを板状にした材料の開発である。国内にはこうした材料がないため、同社では炭素繊維の織物と熱可塑性の樹脂を何枚も重ね合わせ、熱と圧力をかけながら厚さ2~3mmの板状にする。この際、強度を損なわないよう空気の含有量を5%以下にするのが目標だ。
安定した品質で板が製造できるようになれば、いよいよ加工技術の研究を本格化させる。同社の北久芳社長は「熱可塑性CFRPを加工するには熱と圧力の制御が重要」と話し、材料や金型の加熱方法やプレス機の加圧制御方法について研究するほか、成型後の切断や穴開け加工の方法についても検討する計画だ。同社の実験では現在プレス加工に要する時間は3分程度だが、「自動車産業で活用してもらうために、1年後には1分にしたい」(北社長)と意気込む。
研究開発にあたっては、プレス加工や金型製作にノウハウを持つ(株)宮本製作所(宝達志水町)や前川精工(株)(金沢市)と連携するほか、強度の評価、測定などを県工業試験場が担当する。
企業名 | 有限会社 北鉄工所 |
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創業・設立 | 創業 昭和33年3月 |
事業内容 | 繊維機械、コンベアなどの部分品のプレス加工、レーザー加工 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.55より抜粋 |
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掲載号 | vol.55 |