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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
サン・アロイでは現在、耐久性に優れた温・熱間鍛造用の金型材料として、新たな超硬合金の開発に取り組んでいる。
温間鍛造とは材料を600℃から800℃に、熱間鍛造とは材料を800℃以上に熱する鍛造法のこと。現在、温・熱間鍛造用の金型材料には、タングステンカーバイド(WC)にコバルト(Co)を混合したWC-Co系超硬合金、あるいは鉄にWC などを混ぜたハイス鋼が使われているが、それぞれ高温で酸化して強度が落ちたり、硬度が低く摩耗してしまうため、寿命が短いという問題点があった。
そこで同社では独立行政法人産業技術総合研究所の技術を活用して、コバルトの代わりに鉄(Fe)とアルミ(Al )を配合したWC-FeAl 系超硬合金を開発。現在までに、温・熱間鍛造用の金型材料として十分な耐熱性と従来の超硬合金を上回る耐摩耗性を実現した。
通常、超硬合金の焼結は粉末状の金属を1,400℃の真空焼結炉に入れて行われるが、アルミはそれよりも低温で蒸発してしまうため、粉末材料を溶かさずに焼結する通電焼結炉を用いた。
開発は経済産業省の平成19年度戦略的基盤技術高度化支援事業に採択され、5カ年計画で進められている。開発は産業技術総合研究所と連携するほか、金沢工業大学の岸陽一准教授が評価試験を担当。今後は、従来の超硬合金よりもわずかに劣る耐衝撃性の向上、大量生産への対応などに取り組む。
サン・アロイの主力は、材料を加熱せずに鍛造する冷間鍛造用の金型材料の製造だが、温・熱間鍛造用金型材料の市場は冷間鍛造用よりもはるかに大きい。WC-FeAl 系超硬合金が完成すれば、新規市場参入の大きな武器となる上、レアメタルの代替材料という点でも大きな意味を持つ。
同社の宗行伸一郎社長は、「最終的には、従来の金型に比べて寿命を10倍にしたい」と目標を話し、自動車部品以外にも業容を広げる切り札として期待をかけている。
Message from Another Side 産総研・サステナブルマテリアル研究部門・相制御材料研究グループでは、メカニカルアロイングや超急冷法で非平衡状態の粉末を作製、パルス通電焼結法を用いて非平衡状態の焼結体や、焼結時に生成する結晶相を制御した焼結体を作製するなど、従来、溶製法では作製できなかった非平衡相を積極的に利用した新規材料の開発を進めています。今回(株)サン・アロイと共同で開発したような硬質材料の研究の他にも、ナノ結晶を有するチタン合金、マグネシウムアモルファス合金などを開発してきております。さらに現在では、磁性材料、熱電材料など様々な機能性を有する材料開発を行っています。また、材料開発だけではなく、より産業に近い用途のための技術開発も行っております。 独立行政法人産業技術総合研究所 中部センター Email:k-ozaki@aist.go.jp |
企業名 | 株式会社 ノトアロイ |
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創業・設立 | 設立 昭和59年7月 |
事業内容 | 超硬合金の製造販売 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.53より抜粋 (平成24年10月に(株)サン・アロイから(株)ノトアロイに社名変更) |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.53 |