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経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品などを活用した、商品開発や販路開拓を紹介する
美川仏壇を製造する佛壇の山本が「地域産業資源活用事業」の認定を受けて取り組むのは、現代生活にマッチした仏壇の製造と販路開拓である。
住宅事情やライフスタイルの多様化に合わせて、仏壇に対するニーズも変化している。「家に仏間がない」「マンション暮らしで大きな仏壇は置けない」といった声はその代表的なものだろう。同社では、こうしたニーズを踏まえ、高さ70センチ、幅と奥行きが40センチ程度の小型仏壇を製造するほか、現代的な生活空間に調和するよう、華美な装飾を減らすなど、デザインもシンプルなものにしている。
住宅の高気密・高断熱化への対応もこうした取り組みの一つだ。高気密・高断熱住宅は、換気が十分でなければ湿度が上がってしまい、それが仏壇の傷みや狂いの原因となる。美川仏壇は元来、堅牢であるとの評価が高い。その堅牢さを支えているのは、美川仏壇特有の「錆地(さびじ)」と呼ばれる下地が湿気を寄せ付けないためである。これは漆と砥の粉を混ぜたものを白木にヘラ付けしたもの。今回の取り組みでは、錆地が施されない部分にまで生漆を塗布して一層耐久性を高めている。同社の山本洋司氏は、「伝統的な技術を残していくためには、売れるものづくりが大切」と話し、デザイン性や耐久性を向上させた小型仏壇を規格品として製造するほか、オーダーメードにも対応していく。
オーダーメードの一環として、同社が今後、ニーズを見込んでいるのが既存の仏壇の部材を再利用した小型仏壇の製造である。
きっかけは小松市出身で現在は埼玉県内のマンションに住んでいる女性からの相談だった。「両親がなくなったので実家を取り壊すことにした。両親が大事にしていた仏壇を持って行きたいのだが置き場所がない」。
女性の実家にあった仏壇は70代と呼ばれる昔ながらの大きなサイズ。両親の思い入れも深く、前柱や引き出しには美しい蒔絵が施されていた。そこで山本氏は、この仏壇から前柱や引き出しといった部材を取り出し、これらを再利用して、小型仏壇を作ってはどうかと提案したところ、大変喜ばれたという。
古い仏壇を廃棄処分してほしいとの要望も多く寄せられるが、「古くても使われている蒔絵や金具、彫り物には、現代の名工もうなる高度な技術が駆使されていたり、現在では再現が難しいものもある」と山本氏は話し、今後は小型仏壇へのリメイクを新たな選択肢として広く提案していく。
企業名 | 佛壇の山本 |
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創業・設立 | 創業 平成8年4月 |
事業内容 | 美川仏壇の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.51より抜粋 |
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掲載号 | vol.51 |