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福井鉄工所の主力となっているのは、橋やトンネル、ダム、ビルといったコンクリートの構造物や製品を成型するための鋼製型枠の設計・製作である。得意とするのは、長さが50mもあるような大型の型枠だ。設計から板金、溶接、組立、塗装に至るまで、すべての工程を一貫して手がけており、通常約2ヵ月かかるところを3週間から4週間で納めるという短納期も大きな魅力となっている。
同社では、こうした技術力、対応力をもっと広くアピールしようと、大阪の映像会社に協力を得て1分間のPR動画を制作、今年5月から動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」を使って公開している。
その背景となっているのは、売り上げの70~80%を占める型枠需要の先細りだ。型枠の取引先は日本各地に広がっており、これまで同社では、関東で仕事がなければ九州へ、九州になければ北海道へといった具合に全国へ営業展開することで、受注を維持してきた。しかし、近年では公共事業の削減により、型枠の売り上げはピーク時に比べ、約半分にまで落ち込んでいるという。
何とか落ち込みをカバーしたいと考えていた福井義晃社長は、ISICOが主催するセミナーで動画を使った販路拡大について説明を聞き、「とにかく世界中で見てもらえることがすごい」と感じ、制作を即決した。
内需は伸び悩んでいるが、海外に目を向ければ、中国やインドなど建築、土木に対する需要が急増している国はまだまだある。福井社長は「アジア各国に比べれば、技術的に10~20年は先行しているという自負がある」と胸を張る一方で、「海外への営業は難しい」と話し、「動画を活用して海外からの受注の糸口を見いだせれば」と期待を寄せている。
型枠の販路拡大に取り組む一方で、長年培ってきた板金や溶接の技術を生かして、防音・防振設備の製造など、新たな事業にも力を入れている。
例えば、集中豪雨などによってビルに雨水が流れ込むのを防ぐ防水板もその一つ。特に都市部での需要が伸びており、ナゴヤドームなどの防水設備にも同社の防水扉が採用されている。
また、いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)に採択され、古紙と珪藻土を使った環境に優しい吸音材を開発した。これまで、防音室の多くで吸音材として利用されてきたグラスウールに比べ、性能やコストは同等でありながら、廃棄時の環境負荷を軽減できるという。
福井社長は動画を広告宣伝の一つと考えており、こうした新事業も盛り込み、バージョンアップしたいと構想を練っている。
企業名 | 株式会社 福井鉄工所 |
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創業・設立 | 創業 昭和33年3月 |
事業内容 | コンクリート製品成型用鋼製型枠の設計・製作、工作機械部品の加工、各種防音・防振装置の製作 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.52より抜粋 |
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掲載号 | vol.52 |