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県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
シグマ光機では、産学官連携によって従来よりも高性能で安価な光学機器用小型アクチュエータを開発した。
アクチュエータとは、光学機器などの内部で部品の制御や位置決めに使われる駆動装置である。
新開発したアクチュエータは、圧電セラミック材料を20層あまり重ねた構造体に電圧を加えて振動させ、駆動力を発生させる。電圧の強さや電圧を加える部位を変えれば、あらゆる方向に動きをコントロールできる。50ナノメートル単位で動かすことが可能で、これは電磁モーターを使った従来のアクチュエータに比べて3倍以上の精度。価格は既存製品の約7割に、サイズは半分以下に抑えた。
同社では、このアクチュエータを使って、光を反射させる鏡を保持、制御するミラーホルダーを製品化。今後は、分光器、干渉計といった測定機器などに組み込まれる部品として利用を見込んでいる。
今年1月にはアメリカ・サンフランシスコで開かれた世界最大級の光学技術展示会「フォトニクス・ウェスト」で研究の成果を披露。精度とサイズに多くの関係者が興味を示し、同社では今後の販路拡大に手応えを感じている。
今回の開発は、経済産業省地域イノベーション創出研究開発事業に採択され、平成20年度から2年にわたって、石川県工業試験場機械金属部、ニッコー(株)、東京工業大学の中村健太郎教授と協力して取り組んだ。
産学官連携には、新たな技術やノウハウが得られる、研究開発のスピードが上がる、研究開発費用を軽減できるといったメリットがあるほか、同社の水村峯夫取締役は「若手技術者の育成にも有益」と話す。高度な技術開発へのチャレンジは社員のモチベーションや達成感につながる上、連携を通して広がった人脈はその後の仕事でも役に立つ。国の事業に採択されれば、定期的に報告会が行われ、さまざまな角度から専門家のアドバイスが受けられ、開発のヒントになる。こうした点が技術者の成長につながるというわけだ。
アクチュエータは今後、顕微鏡に組み込むタイプや半導体製造装置用に真空でも作動するタイプなど、用途に応じた開発を続けていく計画だ。水村取締役は「光学技術は欧米が先行しているが、今回の技術開発は世界に誇れる成果」と自信を見せており、「光を使った計測、分析は応用範囲が広い。医療や環境など、関連メーカーにさまざまな分野で活用してほしい」と期待をかけている。
企業名 | シグマ光機株式会社 |
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創業・設立 | 設立 昭和52年4月 |
事業内容 | 工学基本機器製品、光学研磨・薄膜製品、自動応用製品、レーザシステム製品、バイオ関連製品、光学システム製品など |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.52より抜粋 |
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掲載号 | vol.52 |