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ISICOは3月3日、県地場産業振興センター新館で「ネットショップコンテスト石川2009」の表彰式とモチベーションアップセミナーを開催した。当日は、グランプリとして(有)グラスヒュッテ・オダ(野々市町)が運営する「表札1.com」を選んだほか、(株)山岸竹材店(高知県)が運営する人気ネットショップ「竹虎」の山岸義浩代表取締役が講演。
今回の特集では、受賞サイトの工夫点や審査員の評価などをもとに、繁盛店の成功要因を探った。
コンテストは、県内のネットショップ運営者に対し、評価を受ける機会を創出すると同時に、優れた事例から学ぶ機会を提供することを目的に企画したもので、今年で2回目の開催となる。
事前に応募のあった県内のネットショップ138店の中からISICOのホームページドクターを務める専門家ら10人の審査員が11店のファイナリストを選出。この中からグランプリ、準グランプリ、審査員特別賞を決定した。
グランプリを受賞したのは、約2万枚の販売実績を誇る「表札1.com」。準グランプリには昨年7,500万円を売り上げた「ダンボールワン」が選ばれた。
ここからは、この2つの受賞サイトについて審査員の講評などをもとに、売れるネットショップの条件を考察してみよう。
まず、押さえておかなければならないのは「特定商取引法に基づく表示」「会社概要」「プライバシーポリシー」の記載だ。これらの項目を明示することで、初めて訪れるショップに対する不安感を取り除くと同時に、安心感や信頼感を与えることができる。
買い物かごの設置も忘れてはならない条件だろう。ネットショップの出来は、視覚的なデザインに気を取られがちだが、決済までのプロセスを分かりやすくするなど、快適にショッピングを楽しめる環境が大切なのである。
とはいえ、言ってみればこれらは必要最低限の条件である。Eコマース市場は成長期から成熟期に入ったと言われる。出店すれば売り上げが伸びるという時代はすでに終わり、ライバルが続々と参入して競争は激化するばかり。利用者も、ネットショップを使ったことのない初心者は減り、目の肥えた購入経験者が増えている。
そのような中にあって、ネットショップの売り上げを伸ばしていくためにまず求められているのは、確かな“ 商品力”だろう。
例えば、グランプリを受賞した「表札1.com」が販売しているのはオーダーメードの表札である。ガラスや鉄、アルミといった素材はもちろん、形や色、文字の書体など、顧客のニーズを取り入れ、優れた技術で世界にたった一つの表札を作り上げている。
商品力が大切と言っても、他社との差別化が難しい場合もある。能登紙器(株)(七尾市)が運営する「ダンボールワン」の扱っているダンボールもそういった商品の一つだろう。そんなときにぜひ発揮してほしいのが“企画力”である。
同社ではオーダーメードが常識だった業界の常識を覆し、人気サイズ10種類を規格品として製造、小ロットでも安く買えるようにした。また、ダンボール箱とクラフトテープ、緩衝材を組み合わせた引っ越しセットを考案し、個人客のニーズを開拓した。
商品力、企画力に続いて成功の条件として挙げたいのが“店舗力”である。店舗力とはつまり、集客力や対応力といった言葉に置き換えてもいいだろう。
集客力をアップさせるならば、大手ショッピングモールに出店するのも一つの手段だろう。表札1.comのように取り扱い商品ごとに複数のネットショップを運営し、相互にリンクを張って相乗効果を狙うのも有効だ。また、年に一度開催している「自慢の表札コンテスト」に寄せられた写真を掲載し、利用者の笑顔を通じて満足感を伝えたり、スタッフの顔写真を載せて信頼感を醸成していることも店舗力のアップにつながっている。
店舗力を向上させるならば、対応力の強化にも努めたい。ダンボールワンでは、自動見積もりシステムを導入することで、最短で翌日納品を可能にしている。こうしたスピーディーな対応力も他社との大きな差別化につながるはずだ。
ここまでネットショップ成功の条件として、商品力、企画力、店舗力を挙げてきたが、最後に忘れてはならないのが“人間力”だろう。
表札1.comならば確かな技術を持った職人がいて、顧客のニーズに添えるよう何度もメールをやりとりして修正を重ねるデザイナーがいる。ダンボールワンならば、入社以前にネットショップを運営した経験を持ち、入社後も商品の特性に応じた企画を次々と考案するウェブマスターがいる。
商品力、企画力、店舗力、そして人間力。ネットショップの運営においては、これら4つの力に磨きをかけることが、売り上げアップにつながっていくようだ。
表札1.com
(有)グラスヒュッテ・オダ
代表取締役社長
尾田知之氏
受賞できるとは思ってなくて驚きました。業界でも最高レベルのガラス塗装技術、安心できるアフターサービスなど、お客様に喜んでもらえる商品づくりを第一に考えていて、ネットショップでも、 そのことを前面に打ち出しました。お客様にハッピーを届けられるサイトを目指して、これからも頑張ります。
ダンボールワン
能登紙器(株)
ウェブマスター
辻俊宏氏
5年前からスタートしたネットショップは、会社の売り上げの40%を占めるまでに成長しました。売り上げが伸びない時期もありましたが、今日まで続けてきて本当に良かったと思います。 まだまだ自己満足のサイトに過ぎませんから、これからは第3者の意見も取り入れて、どんどん改善していきたいですね。
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | 新産業創出のための総合的支援、産学・産業間のコーディネート機関 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.51より抜粋 |
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掲載号 | vol.51 |