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経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品などを活用した、商品開発や販路開拓を紹介する。
山中漆器の蒔絵(まきえ)を手がける大下香仙工房では、「地域産業資源活用事業」の認定を受け、「色くくり蒔絵」で装飾した筆記具、文具小物の商品開発、販路拡大に取り組んでいる。
色くくり蒔絵とは絵柄の縁を蒔絵による金線で描き、その内側に漆絵を施す技法で、同工房が独自に考案した。生産工程が短縮され、 伝統的な蒔絵の華やかさや品格を損なわずに、コストダウンと納期短縮が可能となる。
同工房では現在、「アニマル・ペン」と名付けた万年筆(28,350円)とボールペン(19,950円)を商品化。絵柄のモチーフにはシロクマやペンギンといった動物や昆虫を採用、伝統的なタッチとは一線を画すポップでかわいいデザインに仕上げている。東京都内のセレクトショップやデパートでの展示会、通信販売などで販売しており、その優れたデザイン性に加え、手の届く伝統工芸品として支持され、順調に売り上げを伸ばしている。
「加賀蒔絵の技法を生かし、日本産の漆や色顔料を用いて一本ずつ手作りしている。使い込むうちに色が鮮やかになり、手になじむ」。アニマル・ペンのデザイン、制作を担う同工房の大下香征氏がそう話すように、本物の工芸品ならではの所有する楽しみを感じられる逸品だ。
創業以来、棗(なつめ)など茶道具の蒔絵を主力としてきた大下香仙工房が筆記具を製造したのは、これまで国内外の万年筆メーカーから委託を受け、数十万円から数百万円する高級蒔絵万年筆を制作してきた経験があったからだ。
平成18年秋には、東京都内で開かれたクラフト展に出展要請を受け、何か若い世代に提供する商品を作りたいと、動物をデザインした万年筆を出品。これが好評で、その後、大手通販会社のカタログにも取り上げられ、アニマル・ペンの生産を本格化させた。
こうした取り組みが呼び水となり、昨年はイベント用として人気キャラクター「ムーミン」「天才バカボン」を蒔絵で描いた万年筆の制作を受託するなど、仕事の幅が広がっている。
現在は万年筆に続いて文具や書類を納める小箱、卓上時計を商品化。今後はさらなる新商品の開発や大手文具専門店への販路開拓に挑戦する予定で、香征氏は「蒔絵や漆器になじみのない人が、手にとってもらうきっかけになれば」と腕まくりする。
企業名 | 漆工芸大下香仙工房 |
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創業・設立 | 創業 明治27年 |
事業内容 | 蒔絵の制作、漆工芸品の企画、製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.50より抜粋 |
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掲載号 | vol.50 |