本文
県内では、産学官の連携によってニュービジネス創造を目指す動きが本格化しています。
ここでは、その実例に迫ります。
谷田合金では、ピンホールを発生させないアルミ鋳物の鋳造技術を開発した。ピンホールとはアルミ鋳物に生じる欠陥で、0.1mm程度の小さな気泡のことである。溶けたアルミに含まれる水素ガスが凝固途中に放出され、発生する。
同社では大気圧の7~8倍に加圧した環境下でアルミを凝固させることで、ガスの放出を抑制し、ピンホールの根絶を可能にした。また、溶融炉と鋳型のそれぞれに圧力をかけ、その圧力差をコントロールしながら溶けたアルミを鋳型に流し込む技術を開発。これによって、欠陥が生じにくくなると同時に、より複雑な形状の製品が作れるようになった。
この技術開発は、ISICOの「平成20年度産学・産業間連携新豊かさ創造実用化プロジェクト推進事業」に採択され、石川県工業試験場機械金属部が、加圧環境下での製造シミュレーションやでき上がった製品の評価を担当した。
谷田合金は薄肉精密鋳物や高速精密加工を手がけており、車やバイクのエンジン部品の試作・開発、半導体製造装置部品など加工難度の高い小ロット品の製造を得意とする。ピンホールは用途によっては問題にならないケースもあるが、こうした精密な製品を作る場合は破損の原因として敬遠される。
例えば、半導体製造装置に用いられる真空チャンバ(容器)もその一つである。これまで同社では、ピンホールのないアルミの圧延材を切削加工して製造していたが、新技術を活用すれば、納期を約1/3に、コストを約半分に減らすことができる。
すでに大手半導体装置メーカーの製品適用試験も開始し、昨年12月に幕張メッセで開催された半導体製造装置・材料の国際展示会「セミコン・ジャパン2009」に初出展し、技術を紹介したところ、多くの引き合いが寄せられたという。
また、航空機産業でも販路を拡大しようと、航空宇宙分野の品質マネジメントシステム「JISQ9100」を取得したほか、同分野における特殊工程管理の国際規格「Nadcap」の取得を目指す。
同社の谷田由治社長は「0.1mm程度のピンホールはなくなった。今後はさらに微細なピンホール欠陥を抑制したい」と話し、さらなる高みを見すえて研究開発を続けている。
企業名 | TANIDA 株式会社(旧:谷田合金株式会社) |
---|---|
創業・設立 | 設立 昭和37年5月 |
事業内容 | エンジンの試作・開発、産業用ロボット部品の製造 |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.50より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.50 |