本文
経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品などを活用した、商品開発や販路開拓を紹介する。
地ビールづくりなどを手がける農業法人わくわく手づくりファーム川北では、「いしかわ産業化資源活用推進ファンド(活性化ファンド)」の採択を受け、ギャバを豊富に含んだ機能性ビールの開発に挑戦している。ギャバは血圧降下作用や抗酸化作用、リラックス効果などがあるとされるアミノ酸の一種だ。
機能性ビールを製造する第一段階として、昨年取り組んだのがモルト(麦芽)の自家生産である。モルトは収穫した大麦を発芽させた後、焙煎したビールの主原料で、ギャバを含有する。これまで同社では、地元で育てた大麦を栃木県内のメーカーに委託して、モルトを生産してきた。
しかし、メーカーは試験開発用の小ロット生産には対応していないため、石川県農業総合研究センター流通加工グループに指導を仰いでモルトの生産技術を習得。昨年4月には自家生産したモルトを使ったビールの試験製造にこぎ着けた。
モルトにはデンプンやタンパク質の分解を促進する役割があり、ビールの味や香りを大きく左右する。「試験的に製造、販売したビールはフルーティーでまろやかな味わいに仕上がって、評判もよかった」。同社の入口博志社長はそう話し、モルトの自家生産に手応えを見せる。
もちろん、ゴールはおいしいだけでなく、機能性に富んだビールの開発である。機能性成分分析に関しては石川県立大学の榎本俊樹教授と連携し、今後、発芽日数とギャバ含有量の相関関係、ギャバの成分を増加させる焙煎法などについて研究を進め、来年には商品化する計画だ。
同社が地ビールの製造、販売を始めたのは平成12年にさかのぼる。多くのビールメーカーでは安価な輸入大麦を使用しているが、農業をベースに事業展開する同社では、川北町内で栽培した大麦と白山の伏流水にこだわって醸造してきた。濃厚でクセの強い地ビールが多い中、同社の商品はまろやかで飲みやすいと好評だ。しかし、売り上げはほぼ横ばい状態が続いており、機能性食品に対する消費者ニーズに応えてラインアップを拡充することで飛躍につなげたいと新商品開発に乗り出した。
栓抜きを使わずに缶ビールのように簡単に開けられるスタイニーボトルの導入も今後の課題の一つである。現在、同社の商品はすべて瓶ビールで、約60%は駅や空港で土産用として売れている。「スタイニーボトルを導入することで、例えば出張帰りに、手軽に飲んでもらえるようになる」と入口社長は話し、「平成26年度の北陸新幹線の金沢開業までには導入したい」とボトリング機械の改造に取り組んでいる。
企業名 | 有限会社 わくわく手作りファーム川北 |
---|---|
創業・設立 | 設立 平成10年3月 |
事業内容 | 地ビールの製造・販売、農畜産物の生産・加工・販売など |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.50より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.50 |