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伝統的な金沢箔や金銀糸に加え、産業資材として幅広い分野で使われるホットスタンプ箔を販売するカタニ産業では、20年以上前から取り組む海外戦略をさらに強化させる。その背景にあるのは、国内需要の伸び悩みである。同社の蚊谷八郎社長は「海外への販売比率を現在の20%弱から30~35%へと増やしたい」と話し、拠点整備や人材育成を急ぐ考えだ。
同社の主力であるホットスタンプ箔は、合成樹脂フィルムに貴金属を蒸着させた製品で、化粧品・酒・菓子のパッケージや容器、携帯電話・家電製品・自動車の部品などに幅広く活用されている。
海外では、現地従業員100人が働く生産拠点をマレーシアに構えるほか、中国の深.と香港、シンガポールに営業拠点を持ち、現地や周辺国に進出している国内外の家電メーカーや自動車メーカーなどから受注を取り込んでいる。
現在、化粧品メーカーなどが多いヨーロッパ市場への営業を強化するため日本語の堪能なフランス人スタッフを採用し、技術的なノウハウについて教育しているほか、北米市場の開拓を目的にアメリカ西海岸へスタッフを派遣し、情報発信に力を注いでいる。
さらに、将来的には中国の上海あるいは華北地区、経済成長著しいインド、安価な労働力で工場進出が相次ぐ東欧諸国などへの進出も視野に入れる。
明治32年創業のカタニ産業は、加賀藩から続く金沢箔の一翼を担う老舗だ。西陣織をはじめ着物文化を支える金糸、銀糸が主力商品の一つだが、一方で、蚊谷社長が「伝統は革新の連続。企業が生き残るためには変化に対応しなければいけない」と話すように、同社ではこれまでも産業界のニーズに応じた商品開発にチャレンジしてきた。例えば、昭和30年代にはそれまで職人の手作りが常識だった金箔製造を他社に先駆けて機械化し、生産性を向上。さらに、ホットスタンプ箔では世界のリーダーとしての技術を確立させ、現在のような広範な分野で世界中へ販路を広げることに成功した。
幅広い業種で減産の動きが広がった世界同時不況は同社の業績にも暗い影を落としたが、蚊谷社長は「製品に付加価値をもたらす当社の技術は、取引先がピンチのときにこそ力を発揮する」と反転攻勢に期待を込める。
最近では、箔に通電性や抗菌性といった機能性を持たせて用途を拡大。また、六価クロムや鉛など環境負荷の高い溶剤を用いるメッキや塗装の代替技術としてホットスタンプ箔が注目されており、環境対応に取り組む企業や製品への提案を強化していく考えだ。
企業名 | カタニ産業 株式会社 |
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創業・設立 | 創業 明治32年4月 |
事業内容 | ホットスタンプ箔、ホットスタンピング機材、貴金属箔・粉、金銀糸、合成樹脂フィルム、あぶらとり紙などの製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.50より抜粋 |
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掲載号 | vol.50 |