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経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業の取り組みが、本格化している。
ここでは、県内中小企業の中から認定を受けた企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品、観光資源など、地域資源を活用した商品開発、販路開拓について紹介する。
山中漆器の製造を手がける中山漆工では、柔軟性の高い「しなやか漆皮(しっぴ)」を開発した。
動物の皮に美しい漆の光沢が輝くこの製品は、その名の通り、柔らかいのが最大の特徴。折り曲げても漆がはがれ落ちたり、割れたりすることはない。漆器と同様に、蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)といった華やかな加飾をほどこすことも可能だ。
25cm角のシート状素材として販売し、ファッションやインテリアなど、さまざまな分野での用途拡大を目指している。
すでに商談が成立したケースもあり、7月末には、バッグやアクセサリーなどを企画、販売する(株)サザビーリーグ(東京)が展開するブランドの一つ「agate(アガット)」でしなやか漆皮を使ったバッグが商品化され、販売がスタートした。
そもそも漆皮とは、動物の皮に漆を幾重にも重ねて、堅牢度を高めたものである。古くは中国で武具の素材として使われたが、日本ではそれほど技術が広まらなかった。旧来の漆皮は柔軟性に乏しく、用途も限定的だ。
一方、同じ漆皮と言っても、しなやか漆皮の製法はそのような伝統的な技法とは一線を画する。
まず、漆が浸透しないポリプロピレンのシートに漆を塗布。そこに皮を密着させると、皮の方から水分が蒸発し、漆が乾燥する。塗膜は一層だけで、わずか0.1mm以下の薄さ。ポリプロピレンと接していた漆の表面にはゴム質の成分が多く残り、柔軟性が維持される。
漆の特性とポリプロピレンという現代的な素材をうまく組み合わせた技法であり、中山幸彦社長は「イノベーションによって、漆の新たな可能性を見いだした」と胸を張る。もちろん、1枚1枚が職人の手作業によるものだ。
漆皮は、素材の保護や強化に効果的で、抗菌性に優れ、カビが生えないなどのメリットがある。
中山漆工では、年間3万枚の供給を計画。「地域産業資源活用事業」の認定を受け、ファッション分野のほか、約300℃までの耐熱性を有することから工業分野での用途拡大や販路開拓にも取り組むなど、これまでの漆器市場とは異なる分野に、素材メーカーとして挑戦する。
企業名 | 有限会社 中山漆工 |
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創業・設立 | 創業 大正11年 |
事業内容 | 山中漆器の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.47より転載 |
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掲載号 | vol.47 |