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経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業の取り組みが、本格化している。
ここでは、県内中小企業の中から認定を受けた企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品、観光資源など、地域資源を活用した商品開発、販路開拓について紹介する。
衣類用の丸編みニット生地の製造を長年、手がけてきた八木繊維工業。その生地製造のノウハウを衣類以外の分野で生かしたのが、今回、地域産業資源活用事業の認定を受けた「環境負荷に配慮した生分解素材による防草シートの商品改良・開発と販路拡大」だ。
防草シートとは、道路沿いの街路樹の下などに雑草が生えるのを防ぐために敷かれるもので、太陽の光をシートでさえぎり、光合成をストップすることで植物の生長を妨げる。
同社では衣類で使用する糸の3倍近くに当たる生分解性糸を使い、布地に約1cmの厚みを持たせることで遮光率を98.7%とした。さらに防草効果を高めるため、木酢液をシート裏面に塗布した。
開発を始めたころに一般的だった防草シートは、シート表面で水を弾くタイプが多かった。そのため、シート下の土が乾燥してしまい、街路樹などの生育に影響することが心配されていた。生分解性糸を使用した同社のシートは透水性や保水性が高く、シート下にも水が十分に行き渡る。
また、伸縮性に富んでいるため凹凸のある面にもなじみやすいという特徴があるほか、色彩にも配慮し、緑と茶色の糸をランダムに編み込むことで、自然な色合いを実現した。
生分解性糸を使った同社の防草シートは、約3.5年で土に還っていくため、古くなったシートを撤去する必要がなく、既存のシートで必要となる撤去作業の人件費などを抑えられる。また、石油由来の原料を使っておらず、廃棄物を一切出さない点でも環境に優しい。
このように環境面に配慮した結果、同社のシートは、1平方メートル当たり1,000円と他社製品に比べて2~3倍高くなった。だが、八木秀樹社長は「撤去費用を浮かすことができるので、他社のシートとトータルコストでは同じ」と強調する。
同社では今後、国や地方自治体が管理する一般道路や高速道路、公園などへの導入を積極的に働きかけるほか、将来的にはホームセンターやインターネットで販売し、個人需要も取り込みたい考えだ。
この事業では、原糸から染色までの工程で石川県内の9社と連携体制を構築しており、八木社長は「数年後には、当社の売り上げの半分以上を占める柱に育て、地域振興にも役立てたい」と意気込む。
企業名 | 株式会社 八木繊維工業 |
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創業・設立 | 設立 昭和43年4月 |
事業内容 | 丸編みニット生地製造業 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.46より転載 |
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掲載号 | vol.46 |