本文
経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業の取り組みが、本格化している。
ここでは、県内中小企業の中から認定を受けた企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品、観光資源など、地域資源を活用した商品開発、販路開拓について紹介する。
加賀市に在住する九谷焼作家で組織する加賀九谷陶磁器協同組合では、昨春に発売して好評だった九谷焼腕時計の第2弾を制作するため、準備を進めている。
この腕時計は、直径35ミリの文字盤に、九谷焼の技術を駆使して色絵を付けたもの。一人ひとりの作家が工夫を凝らした繊細な文様が表現され、どれも一品ものとなっている。
昨年4月に発売された第1弾では、組合員33名が参加し、合計100個を限定生産。価格は10万円から25万円で、加賀市の高間時計店とインターネットで注文を受け、70個を販売した。
さらに商品開発と販路開拓を進めようと、昨年12月には「地域産業資源活用事業」として認定を受けた。現在、新商品の開発に生かすため、購入者に対して、デザインや機能についてのアンケートを実施している。これらの意見を参考に今年6月中には方針をまとめ、その後、限定50個の予定で制作に取りかかる計画だ。
同組合が「身に着ける九谷焼」をテーマに腕時計の開発に乗り出したのは平成19年のことだ。時計のデザインは加賀市在住の工業デザイナーに依頼。販売・メンテナンスについては地元時計店の協力を仰ぎ、時を刻むムーブメントについては国内メーカーに発注した。試作にあたっては県の助成も得た。
組合としてもっとも苦労したのは文字盤作りだった。文字盤の厚さはわずか0.8ミリ。精密機器だけに、わずかなゆがみも許されない。県工業試験場などに相談し、九谷焼に使用する陶石と酸化アルミニウムを混ぜたアルミナ磁器を開発し、ゆがまずに、十分な強度の文字盤を実現した。
同組合の山本孝理事長が「仕事をもらうだけでなく、これからは自分で仕事を作るようにしなければ」と話すように、今回の腕時計開発は、作り手自らが主導権を握って進めた石川発のものづくりプロジェクトとして意義深い。
また、山本理事長は「商品企画から制作、販売に至るまでのノウハウを得ることができた。今後は作家それぞれの活動に、そのノウハウを生かしてほしい」と話しており、単に九谷焼の用途拡大というだけでなく、業界の人材育成という点でも有意義な試みとなっている。
企業名 | 加賀九谷陶磁器協同組合 |
---|---|
創業・設立 | 設立 昭和36年 |
事業内容 | 九谷焼製造 |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.46より転載 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.46 |