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自社開発の技術を「信じ続ける」勇気

印刷ページ表示 更新日:2012年1月16日更新

ピンチをチャンスに!!
差がつく不況の乗り切り方

「世界のどのメーカーよりも優れている」。24年前にゼロから起業したスミタは、自社の独自技術をそう信じ、一点突破型の売り込みにすべてを賭けてきた。その甲斐あって、この10年間で売上は10倍増となった。長引く不況にあっても、堅調に成長を続ける同社の墨田雄二専務に飛躍の要因を聞いた。

新技術に「実績」の壁

フリーロックステッキ 写真 同社が絶対の自信を持つ技術、それが「機械式無段階ロック・システム」だ。このシステムは、自動車や自転車で使われるチェーンをヒントに墨田専務の父・墨田進社長が考案した。チェーンを蛇腹状に組み合わせた機構によって、パイプなどの高さや長さを自由自在に調節できるのが特徴で、世界を見渡しても類似する技術はない。同社の成長を支えたのは、このオリジナル技術を「信じ続ける」ことだった。
 ロック・システムは、昭和60年の創業と時を同じくして誕生。その3年後には、理容イスの大手メーカーの目に留まり、ヘッドレスト部分に初めてシステムが採用された。
だが、二の矢が継げず、以後10年間のロック・システムの売り上げは年間500万円ほどにとどまった。
売り上げが伸び悩み、墨田社長は一時、廃業も考えたという。
 そんな危機的状況にあった平成9年、サラリーマンから転身した墨田専務が入社した。売れていないロック・システムにも墨田専務には「売れる」という確信があった。技術的には申し分ないロック・システムに足りないのは認知度だと考え、展示会に参加するなど、システムの周知に努めた。
 さらに、どれだけ優れた技術でも、新しい技術には「リスクがあるのではないか」というイメージがつきまとう。企業はそのようなリスクを避ける傾向にあり、市場への普及のカギは、ロック・システムの実績を積むことだと考えた。

ステッキ開発が転機

 実績づくりを急いだ墨田専務は平成10年、ISICOが主催する石川県バリアフリー機器等開発研究調査会に参加した。その中で「急激に高齢化が進む日本において、介護用品分野は成長する」と感じ、バリアフリー商品の開発に着手。ロック・システムを使うことで便利になり、付加価値が上がる商品として考え出したのが「フリーロックステッキ」だった。
 ステッキの長さを調節する部分にロック・システムを用い、高齢者や障害のある人が片手で簡単に、しかも無段階で調節できるように改良した。墨田専務 写真このステッキは、平成10年の第34回石川県発明くふう展で最高賞の発明協会会長奨励賞を受賞。さらに、翌年には石川ブランド認定製品にも選ばれた。
 このステッキ開発が意外な効果をもたらす。それまで展示会などでロック・システムを説明しても、企業からすればどんな商品に使えるのかがイメージしづらく、システムの採用にはなかなか至らなかった。ところが「ステッキで構造を説明すると、理解してもらえるようになった」という。
 ステッキを足がかりに、介護用品メーカーへの提案を矢継ぎ早に行い、病院で採血時などに腕を乗せるための「ワンタッチ高さ調整上肢台」や「ワンタッチ調整式点滴スタンド」などが次々と採用され、事業は軌道に乗り出した。

採用企業の信頼を背負う

 顧客からの信頼を同社が勝ち得た理由は、技術の優位性だけではない。その技術を生かす、きめ細やかな“企画提案力” が後押しした。
 ロック・システムを提案する際には、まず、対象となる商品にシステムを導入した場合、操作性や安全性といった付加価値が高まるかどうかを見極める。その上で、完成品をイメージできる設計図やデザイン画を作成し、企業へプレゼンテーションする。
 採用が決まれば、量産に向けた試作品づくりに全力を挙げ、顧客からのどんな小さな要望にも応えながら、機械式無断階ロックシステム 写真耐久性や操作性を高めていくという。
 ロック・システムによる商品の不具合は絶対に避けなければならないという墨田専務は「システムを採用してもらうことは、その企業の信頼を自分たちが背負うことと同じ」と話し、信頼度100%を常に目指している。

本業を見失わない

3次元CADで製品設計を行い、プレゼンテーションに臨む墨田専務 写真 同社のような小さな開発メーカーが生き残るには本業を見失わないことだと墨田専務は言い切る。その言葉通り、この10年間は、ロック・システムを売ることだけに専念し、本業以外の事業には一切手を出さなかった。今後もその方針に変更はないという。
 自分たちの技術を信じ続けた結果、最近では日本を代表する企業もロック・システムに興味を示すようになった。パナソニック電工ライフテック(大阪府)が今秋発売する介護トイレのひじかけに採用されたほか、トヨタ自動車(愛知県)からも自動車のドアやボンネットの開閉部、ヘッドレスト部分への導入を見込み、試作を依頼されている。
 今後の課題は、ほとんど手作業である生産体制を大量生産に対応させることだ。墨田専務は「ロック・システムを使えば、何かを便利にできると夢を追い続けてきた。事業にめどがついたのは、ここ5、6年のことなので、ようやくスタートラインに立ったばかり」と気を引き締める。
 産声を上げてから20年以上経ったロック・システムは改良を重ね、実績を積んだことで成熟期を迎えた。「世界のどこかで部品として使われてほしい」との思いから、ヨーロッパやアメリカの国際特許も取得。3年前からは中国の商社との取引も始めた。日本国内で認められた“ 本物”の技術は世界に向けて今、飛び立とうとしている。

企業情報

企業名 株式会社 スミタ
創業・設立 創業 昭和60年4月
事業内容 無段階ストッパー装置(杖・業務用ヘッドレスト・点滴スタンド)の製造

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備考 情報誌「ISICO」vol.47より転載
添付ファイル
掲載号 vol.47


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