本文
100年に1度とも言われる大不況の中、中小企業はこの荒波を乗り越 えていくために、どのような手を打つべきか。今回の特集では、ISICOが開催した「中小企業勝ち残りセミナー」の中から、過去20年にわたって3000 以上の工場を訪問し、中小企業の活性化について研究してきた政策研究大学院大学の橋本久義教授が提案する対策の糸口を紹介。同時に、過去の不況を生き抜 き、発展を遂げてきた県内2社の取り組みにスポットを当てる。
工作機械部品の加工などを手がけるニシムラジグの西村明会長は「不況で仕事が減った時には、余力を使って新製品の開発に力を注ぐ」と話す。というのも「不況とはいえ、いずれ日が差すことは間違いない。しかし、景気が好転したときに真っ先にその光を浴びれるかどうかは、不況時の過ごし方にかかっている」と考えているからだ。
その言葉通り、同社では景気が悪化するたびに、小型の研削機や角のある加工物の直角頂点を検出する測定器具など、オリジナル製品を開発してきた。製品ラインアップは20品目を超え、取引先は全国5 万社に上る。その結果、以前はほぼすべてが工作機械メーカーからの委託生産だったのが、昭和50年代以降は徐々に自社製品の販売比率が増え、今では委託生産と自販の比率がほぼ肩を並べるまでになったという。
開発のヒントとなっているのは、自分たちが日ごろ感じている不便であり、販売対象となる同業者にとってはまさにかゆい所に手が届く製品となる。開発にあたっては、既存の技術や設備、販路が75%以上利用できることを条件としてリスクを減らしている。
今回もすでに平面研削盤をロータリー研削盤としても活用できるようにする「研削ロータリーテーブル」など、4つの新製品を考案した。今後は国内にとどまることなく、工作機械の販売にノウハウを持つ台湾企業と連携して海外にも販路を広げる計画だ。
新製品開発には、受注減少によって落ち込む社内の雰囲気を活性化し、社員に未来への希望を持って働いてもらうという狙いもある。経営環境が悪いときは、社員の待遇改善は難しいとしながらも、せめて安心して働いてほしいとの思いから、西村会長は社員を前に「赤字でもリストラはしない」と断言。工場内には不況を感じさせない活気が漂っている。
企業名 | 株式会社 ニシムラジグ |
---|---|
創業・設立 | 設立 昭和20年9月 |
事業内容 | 省力化機器の製造・販売、工作機械部品の加工 |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.45より転載 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.45 |