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ISICOでは、企業の設備投資を支援するため設備貸与制度で、企業の成長を後押ししています。
制度を利用して事業の拡大に成功した企業の取り組みを紹介します。
手取川の伏流水を仕込み水に使った地酒を製造する吉田酒造店。石川を代表する蔵元の一つで、『手取川』をはじめとしたブランドは、全国新酒鑑評会で数多くの金賞に輝いてきた。
同社では、より高品質な酒造りを実現するため、10年前からISICOの設備貸与制度を利用し、システムの充実に力を入れている。特に、「全国でもほとんどない」と吉田隆一社長が胸を張る設備が、昨年7月に導入した「パストライザー」である。
パストライザーが活躍するのは、乳酸菌の発酵による酒質の劣化を防ぐ「火入れ」と言われる工程で、通常は酒を熱処理した上で瓶詰めするか、瓶詰め後に瓶が割れないように少しずつ高温の水槽へと移して加熱する方法がとられている。しかし、前者では空気に触れる時間が長く香味成分の揮発が進んでしまい、後者では人の力が必要で、実際に作業できるのは大吟醸などの高級酒に限られていた。その点、パストライザーでは、ベルトコンベア上を瓶が移動し、酒を充填した後、徐々に高温となっていくシャワーを通過させることで火入れまでを自動化。香りを逃さず、人的コストも抑えられる。
同社ではパストライザー導入後、ほとんどの商品で瓶詰め後の火入れを実践しており、リーズナブルな価格帯での品質の差別化につながっている。
また、今年9月には、プレハブタイプの屋外冷蔵庫を設置した。庫内は2つの部屋に分かれており、異なる温度を同時に設定できる点が特徴だ。火入れを行わず、フレッシュな香りと味を楽しむ生酒はマイナス5℃、加熱したタイプは5℃といったように、日本酒のタイプによって最適な環境で保存できる。屋外冷蔵庫では1升瓶換算で同社の年間生産本数の1/5に相当する5万本を保管でき、貯蔵管理を外部委託していた従来に比べて年間約400万円のコストダウンを見込んでいる。
積極的な設備投資を進める一方で、同社では、昔ながらの手法も大切にしている。「麹づくりや酒母の仕込みといった品質を左右する分野では、やはり杜氏の勘が必要だ。設備投資で合理的に差別化を図りながら、重要な工程に蔵人の力を注いでいきたい」と、吉田社長は意気込んでいる。
同社では現在、ISICOの専門家派遣事業を活用したホームページのリニューアルや経営改善にも取り組んでおり、一層の飛躍に向け、改革と伝統を組み合わせた動きを活発化している。
企業名 | 株式会社 吉田酒造店 |
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創業・設立 | 創業 明治3年4月 |
事業内容 | 清酒の製造・販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.42より転載 |
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掲載号 | vol.42 |