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経済産業省が実施する地域産業資源活用事業に認定された企業にスポットを当て、農林水産物や伝統工芸品などを活用した商品開発や販路開拓を紹介する。
創業から140年近くを数える今九谷窯が取り組んでいるのは、「高白色度白磁」と「無鉛和絵具」を用いた新たな九谷焼の市場開拓である。
九谷焼は原料である陶石の成分により、灰色がかった素地が一般的である。今九谷窯では、石川県九谷焼技術センターの開発した高白色度の粘土をベースに改良を加え、白色度を上げるとともに鉄粉などの不純物を取り除き、洋食器に負けない白さを実現した。さらに、同センターが開発した無鉛和絵具に改良を加えることで、貫入(ひび割れ)が入らないようにするなど、安全性と美しさを兼ね備えた和絵具を完成させた。
こうした技術をベースに今九谷窯では九谷焼の新たな様式を生み出している。
その一つ、「雪九谷様式」は上絵がなく、繊細なレリーフが特徴だ。「華九谷様式」は透明な釉薬によって光沢をまとう。このほか、磁器と陶器を融合し、滑らかな口当たりと温かみのある触感を両立させた「禅九谷様式」、上絵具や釉薬を盛り上げ、立体感を出した「ふくら手様式」がある。
今九谷窯が九谷焼の新様式に挑戦した背景には、九谷焼の需要の落ち込みがある。
そもそも中村太一代表の父親である中村元風氏は作家活動を主体としてきたが、低迷する九谷焼業界の活性化を図るため、個人作家としての作品制作に加え、窯ブランドとしての食器の開発、販売に乗り出した。平成20年までに、現代のライフスタイルに合うよう、先の4つの様式を確立した。
現在、県内で商品を購入できるのは1店舗のみ。日本橋高島屋など全国の高島屋数店舗で常設販売を行っている。このほか、伊勢丹や阪急百貨店、大丸などでは年に10回程度、定期的に展示販売会を開いており、今後もこうした取り組みを通して、徐々にブランドの浸透を図り、商品の取り扱い店舗を増やしていくという。
また、今年10月には、地域産業資源活用事業で交付される補助金を活用して、中国で開催される「中国景徳鎮国際陶磁博覧会」に出展する。世界各国から延べ20万人が訪れるこの博覧会には4年前から出展。今年はデンマークのロイヤルコペンハーゲンやイタリアのリチャードジノリなど、世界の一流ブランドと同じメインブースでの展示が決まっているという。
中村代表は中国での販路開拓に向け「富裕層に陶磁器の愛好家が多い一方、欧米のようにブランドの固定化が進んでおらず、進出する余地が大きい。ギフトではなく、プライベートユースのブランドとして定着させていきたい」と意気込みを見せている。
企業名 | 今九谷窯 |
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創業・設立 | 創業 明治3年 |
事業内容 | 一般用、業務用食器の製造・販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.42より転載 |
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掲載号 | vol.42 |