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昨年3月25日の能登半島地震から約1年2カ月が経過した。マグニチュード6.9、震度6強という県内観測史上例のない大災害を乗り越え、能登では、逆境をチャンスに変えるさまざまなビジネスの芽が育っている。
食肉卸・小売業を手がける寺岡畜産が、復興への第一手に選んだのが、超高級ビーフシチューだ。同社が志賀町と金沢市に構えるレストランで提供するシチューのおいしさをパックにとじ込め、レトルト食品「てらおか風舎の能登牛シチュー」として、各店舗をはじめ、能登空港や小松空港、金沢駅などで、昨年夏から販売を開始した。
1パック(1人前)1,266円とレトルト食品としては高額にもかかわらず、商品の知名度は少しずつ高まっており、売り上げは右肩上がりで伸びている。今年2月には、約1,200品が競い合った全国推奨観光土産品審査会(日本商工会議所主催)で日本商工会議所会頭努力賞に選ばれ、全国放送の情報テレビ番組にも取り上げられた。
高い人気を獲得する理由の一つが、商品名にも入っている「能登牛」にある。年間わずか320頭ほどしか出荷されない貴重なブランド牛だ。昨年11月には、穴水町の幸寿しとタイアップして「能登牛のにぎり」として販売したところ好評だった。今回のシチューに入っている能登牛の品質については、同社がさらに厳選した最高レベルの50頭の肉だけを使っている。その品質に寺岡才治社長は、「全国のどんなブランド牛とも勝負できる」と胸を張る。シチューには、そんな能登牛を容量200グラム中80グラムも利用している。一度食べると、レストラン同様のぜいたくな味わいに魅了され、リピーターになる人が少なくないという。
寺岡畜産がレトルト食品開発に乗り出したのは、今から約2年前。ロースやヒレ肉に比べ、レストランでの使用頻度の少ないスネ肉やバラ肉を有効活用した商品ができないかと考え、レトルトカレーの商品化に取り組んだのが始まりだ。その後、シリーズ化し、シチューの開発に取り組んでいた際に能登半島地震に襲われた。「ゴールデンウイークになっても客足は戻らないまま。だが、その状態をただ嘆いていてもしょうがない。ならば、商品を手にこちらから攻めていこう」(寺岡社長)。同社では、「能登半島地震被災中小企業復興支援基金」の補助金を受け、商品化のスピードアップを図った。
開発後は、積極的に食のイベントに出品した。「イベントに生肉を並べるのは難しい。その点、レトルト食品ならば、当社の看板商品である能登牛も存分にPRできる」(寺岡社長)。今後も、商談会や物産展などの機会を利用し、首都圏を中心とした販路開拓に力を注いでいく。
企業名 | 寺岡畜産 株式会社 |
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創業・設立 | 創業 明治40年 |
事業内容 | 食肉卸、販売、小売り、スーパーマーケット・レストランの経営 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.40より転載 |
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掲載号 | vol.40 |