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スポーツウエア素材と資材用織物の生産を柱とする能任七。人工衛星「きく8号」に搭載された世界最大級の通信アンテナの開発に携わるなど、顧客の不可能と思える依頼にも挑戦し、実績を上げてきた。そんな同社が今回挑んだのは、ビニールハウスなどで使われる通気性、耐久性に優れた網目の細かい農業用ネットの開発だった。
近年、食の安全に対する消費者の目が厳しくなり、農薬を使った農作物は敬遠される傾向にある。そのため、無農薬栽培に欠かせない、病害虫を防除する農業用ネットの需要が急速に高まっている。無農薬を実現するには、ビニールハウス内に侵入しようとする体長1mmほどの小さな病害虫を防ぐ必要がある。しかし、従来のネットでは網目を細かくすると、通気性、耐久性が落ちるという欠点があった。同社では、この欠点を解消するため、太い糸と細い糸を組み合わせる手法を考案。太い糸で耐久性を確保し、同時に太さの違いでできる表面の凹凸で空気の流れを生み出し、通気性を高めた。
同社ではネットの実用性を確かめるため、平成18年からフィールドテストを実施。熊本県内の生産農家に限定販売し、6万m(幅1.8m)を売り上げた。テスト開始から2シーズンが経ち、台風などで破れたという被害報告は一切ない。生産農家からも「従来ネットより、通気性、耐久性に優れている」と高い評価を得た。また、平成19年春に千葉県で実施された性能テストでは、試されたネットの中で、同社のネットだけが唯一、調査対象となった数種類の病害虫を1匹も侵入させなかった。
これまで同社では、農業分野への事業拡大を何度か試みたことがあったが、思うような結果は得られていなかった。今回、農業用ネットが地域産業資源活用事業の認定を受けたことで、能任信介社長は「我が社の農業分野での知名度の低さをカバーし、商品に対する信頼度を高めてくれるのではと期待する。この商品をてこに農業分野への進出を本格化させ、受注増につなげたい」としている。今年から全国販売を開始するのに合わせ、2月から沖縄県を皮切りに各地でキャンペーンを行う予定にしており、その費用に補助金を当てる。今後、農業用ネットは幅1.8mと2.1mの2タイプを用意し、年間100万mを売り上げたい考えだ。
企業名 | 株式会社 能任七 |
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創業・設立 | 設立 昭和40年10月 |
事業内容 | スポーツ衣料生地、資材用織物などの製造・販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.38より抜粋 |
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掲載号 | Vol.38 |