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新産業の創出やその担い手となるベンチャー企業の支援に取り組むISICOでは、革新的な技術やアイデアを持ったベンチャー企業の発掘に向け、9月20日に県地場産業振興センターで「革新的ベンチャービジネスプランコンテストいしかわ」を開催した。今回の特集では、コンテストで最優秀起業家賞を獲得した(株)キュービクスをはじめ、優秀起業家賞に選ばれた3社にスポットを当て、それぞれのビジネスプランや将来展望を探った。
さて、ここからは優秀起業家賞に輝いた3つのビジネスプランを紹介しよう。盤水社の中山貴之氏が構想を練り、今年5月から隔月で発行しているのが、キャリア教育支援マガジン「さくらノート」である。
B5版、32ページ、オールカラーの紙面では、地域で働くさまざまな職業の大人たちを取材し、しごとから得られる喜びや苦労、職業観などを紹介している。毎号10人以上が登場し、左官職人や自動車整備士、シェフ、システム開発者など、職種は実に幅広い。発行部数は3万部。無料で中学校と高校に配布しており、現在、金沢市、白山市、かほく市の約70校に納めている。
これまで4号を発行済みで、評判も上々だ。中高生の子を持つ知り合いから「熱心に読んでいる」という声が聞けたほか、教師や生徒の保護者からも感謝の言葉を記したはがきやメールが何通も寄せられた。総合学習のテキストとして授業で活用している学校もかなりあるという。
そもそも中山代表がさくらノートを企画した背景には、子どもを取り巻く環境への憂いがあった。テレビや新聞からは大人による悪事や犯罪のニュースばかり。中学校や高校ではキャリア教育に力を入れているものの、指導する教師自身も民間企業で働いた経験がないため試行錯誤を続けている。
そして、ある教育シンポジウムでPTA関係者から聞いた次の言葉が、中山代表の背中を力強く押した。「本来大人は子供の手本となるべき。しかし、今の時代は社会人になるための参考書がないのと同じだ」。
この言葉を聞いた中山代表は、それならばとさくらノートの発行を思い立つ。企画にあたっては、職業を紹介する既存の本のように華やかな職業ばかりでは現実味が薄いことを考慮。同時に、地域からの情報発信を重視し、地元で働く等身大の大人たちにスポットライトを当てることにした。「目的をもっていきいきと働く大人はかっこいい。その姿をストレートに伝えたかった」。
また、多くの子どもに読んでもらうには学校で配るのが確実だと考え、サンプルを持って各学校の校長を訪ねて配布ルートを確保していった。
ところで、さくらノートは無料で配布しているだけに、販売収入があるわけではない。とはいえ、誌面の中に収入源となる広告は見当たらず、もちろん学校に経費を負担してもらっているわけでもない。
「運営資金は志に賛同してくれる会員を募り、その会費で運営しています」と中山代表。当初はスポンサーを探すために企業に営業をかけたが、未知の媒体にお金を出してくれるところは見つからなかったために、会員による賛助制度へと方針転換したのだという。
よりたくさんの職種を紹介するため、会費は新聞や雑誌の広告料と比べて格安に設定している。会員企業で活躍する社員の方々を誌面で紹介。子どもたちの健全な職業観を育成するための地域貢献、あるいは将来的な人材採用に向けた投資と考える企業や団体が賛同し、現在70社150口の会員が集まっている。
ビジネスプランコンテストでの優秀起業家賞受賞をきっかけに、ますます認知度の高まりを実感。審査委員の仲介により、東京でもビジネスモデルを発表する機会を得られたという。中山代表は「キャリア教育は全国共通の悩み」と話し、現在の金沢版に続き、今後は加賀版や能登版の発行、さらに他の都道府県への展開も視野に入れている。
企業名 | さくらノート北陸 |
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創業・設立 | 設立 平成19年2月 |
事業内容 | キャリア教育支援マガジンの企画、編集、発行 |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.37より抜粋 |
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掲載号 | Vol.37 |