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新産業の創出やその担い手となるベンチャー企業の支援に取り組むISICOでは、革新的な技術やアイデアを持ったベンチャー企業の発掘に向け、9月20日に県地場産業振興センターで「革新的ベンチャービジネスプランコンテストいしかわ」を開催した。今回の特集では、コンテストで最優秀起業家賞を獲得した(株)キュービクスをはじめ、優秀起業家賞に選ばれた3社にスポットを当て、それぞれのビジネスプランや将来展望を探った。
公共事業は減少の一途をたどる一方で、煩雑な書類の作成によって残業時間は増えるばかり。建設業の抱えるそんな問題点を解決しようというのが、アイサスの百成公鋭社長が提案した電子納品システムのASPサービス事業である。
同社が開発したシステムの導入によって、土木・建設工事を受注した企業は、施工中に発生する書類や図面、写真をサーバーに登録し、社内はもちろん発注者との間で情報を共有することが可能になる。従来は紙の書類で行っていた確認や承認がインターネットを介してできるため、何度も発注者の元へ足を運ぶ手間が省け、事務作業やコストの軽減、納期の短縮が実現する。公共工事では現在、入札や納品などの事務手続きを電子化するCALS/ECの導入が進められており、こうした需要にも対応する。システムは、顧客がインターネットを通じて利用するASP形式によって提供されるため、ユーザーは運用管理の負担が軽くなる。すでに石川県建設業協会が導入しており、加盟各社が利用。平成18年度は石川県が発注する50件の工事で試験運用されたほか、今年度は200 ~ 250件の工事で利用される見通しだ。さらに、岡山県でも採用が決まっているほか、西日本の2府県でも試験運用がスタートしている。百成社長は「全国の都道府県が発注する78万件以上の工事が対象となり、市場は400億円以上になる」と試算し、今後も全国での営業展開に力を入れる構えだ。
今回のビジネスモデルがユニークなのは、地元の建設・土木企業やシステム開発企業等が連携して開発に当たった点にある。通常、こうしてシステム開発の場合、発注者である自治体が主導権を握り、大手ITベンダーが開発を請け負うことが多い。しかし、この手法では莫大な予算がかかる上、出来上がったシステムは利用者にとって使い勝手がよくないというデメリットがあった。
アイサスの場合、地元企業がそれぞれのノウハウを持ち寄って開発し、ASPとして提供するために、自治体の負担は必要ない。実際に工事を請け負う企業と開発を担当するプログラマーがコミュニケーションをとりながら開発を進めることで、使い勝手のよいシステムが完成した。昨年の試験運用においても、約90%の利用者が使いやすいと評価したほか、平均で30%近く作業時間を短縮できたという。
「コンテストで認められたことで、金融機関へもいいアピールになった」と話す百成社長。今後は支援チームのバックアップを受け、全国展開や将来の上場に向け、資本政策を強化する考えだ。
ISICOでは国内はもちろん、世界で通用する革新的ベンチャー企業の発掘・育成に向けて、来年度もビジネスプランコンテストを実施する予定だ。将来有望な企業については経営面や技術面、販路開拓などについて集中的、継続的に支援し、次代の石川を牽引するニッチトップ企業を創出していく。
企業名 | 株式会社 アイサス |
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創業・設立 | 設立 平成17年10月 |
事業内容 | コンピュータソフトウェアの開発、ASPサービス事業 |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.37より抜粋 |
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掲載号 | Vol.37 |