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ISICOでは筑波研究学園都市の研究機関と県内企業の連携を強化するため、現地にアドバイザーを配置し、情報提供や橋渡しを行っている。ここでは、つくばにおける最新の研究情報や産学官連携の取り組みなどについて紹介する。
食料や農業、農村に関する研究を総合的に行う独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構。その中でも、農作物や家畜の糞尿など生物由来の資源(バイオマス)を、エネルギーや素材として利用するための技術開発を専門とするのがバイオマス研究センターである。
平成18年12月に設立された同センターには現在、220名の研究員と9名のコーディネーターが所属。目下、バイオエタノールの研究に力を入れている。
バイオエタノールとは、バイオマスから作られるエタノールのこと。ガソリンに一定の割合で混入し、車の燃料として使われる。地球温暖化問題への関心の高まりや原油価格の高騰などを背景に、世界的にも注目を集めている。
すでに普及が進んでいるアメリカやブラジルではトウモロコシやサトウキビを原料にしているが、穀物価格の上昇や食糧との競合といった問題も顕在化している。そこで、同センターは原料として資源作物や稲ワラ等を採用。現在、沖縄県伊江島などで原料作物の生産、バイオエタノールの製造、車の走行実験などを行っており、5年後をめどに、実証プラントの稼働を目指している。
片山秀策センター長はバイオマスの利用について、「休耕田や耕作放棄農地の活用につながり、農村地域の活性化や雇用確保にも役立つ」とそのメリットを話す。有限の化石燃料と異なり、持続的に使える点も魅力的だ。
現状での価格は1リットル当たり数百円だが、実用化に向けて100円にまで下げるのが目標だ。そのための手段となるのが、生成過程で発生する副生成物の利用である。副生成物には、化学溶剤として用いられるフルフラール、化粧品の材料となるトコトリフェノールやセラミドといった高価な機能性成分が含まれており、これらの販売益で、コストを吸収したい考えだ。
このほか、トウモロコシなどからとれるポリ乳酸や木材からとれるリグニンを活用したバイオプラスチックなど研究内容は幅広く、その成果は、循環型社会の実現を目指して各地で展開されるバイオマスタウン構想にも取り入れられている。
また、同機構では、今年10月に新設した産学官連携センターを窓口に、低コストで生産性の高い農業技術の開発や機能性に優れた農林水産物・食品の開発などに関して、情報提供や共同研究にも熱心に取り組んでいる。
もちろん、ISICOでも情報提供、ニーズとシーズのマッチングを行っている。「ほかの地域にない、特色のあるものを作りたいときにはぜひ力になります」と呼びかける片山センター長。新たなアグリビジネスを模索している方は、ぜひ活用してほしい。
企業名 | (独)農業・食品産業技術総合研究機構 バイオマス研究センター |
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創業・設立 | |
事業内容 | - |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.37より抜粋 |
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掲載号 | Vol.37 |