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人材不足に悩む多くの中小企業にとって、ITを専門とする人材の育成は容易ではない。そこで次は、外部の専門家と協力して、情報化を進めた事例を紹介しよう。
木造注文住宅、増改築の設計、施工を手がけるひまわりほーむは、オリジナルの工事管理システム「ひまわり君」を開発、活用している。インターフェイスは、社員の似顔絵イラストが盛り込まれた楽しげな雰囲気。従来、紙ベースで管理してきた工程や予算、顧客情報、業者への支払い情報など、業務に必要となるさまざまな情報の一元管理、共有化に役立てている。
同社がシステム開発に取りかかったのは約5年前。「仕事のレベルの均質化を図ると同時に、業務におけるルールとプロセスを明確にしたかった」と加葉田和夫社長はその狙いを話す。将来的な株式上場を視野に入れ、内部統制の基盤づくりという目的も兼ねていた。
加葉田社長は手始めに、システム開発やIT導入コンサルティングに関して一定の実務経験を積んだ人材を外部から一年契約で迎え入れることにした。そして、社内に設けたプロジェクトチームと一体となりながら、実際にシステム開発を担うベンダーとの間に立って、IT投資の企画段階から業者の選定、開発、運用に至るまでをモニタリングしてもらうことにしたのだ。
IT導入の成功のポイントとしては、高度な知識やスキルを持った人材の育成、登用が挙げられる。しかし、中小企業の場合、この要件のクリアは難しく、ひまわりほーむの場合も、社内にはITに長けた人材はいなかった。そこで、外部から専門家を招くことで、短期間でより効果的にシステム開発を進められたというわけだ。
さらに、「IT導入はトップダウンで現場の人間に押し付けてもうまくいかない」との考えから、工事、営業、総務、経理の各部門から人材を集め、社内にプロジェクトチームを立ち上げた。これによって、実際にシステムを運用する現場の声を吸い上げ、使い勝手のよいシステムが実現したという。
ベンダーの選定においては、価格だけでなく、どの企業ならば自分たちの要求をしっかりと受け止めて、適切なシステムを構築してくれるかに重点を置き、その結果、後ほど紹介するシステムサポートに決定した。「私たちの本業である家づくりにおいても、施主の家族構成やライフスタイル、将来設計、予算などの要望を十分に理解しないと満足いく家は建てられない。システム開発にもこれと同じことが言える」と加葉田社長。だからこそ、ベンダー選びには自分たちの考えや実情を理解し、最適なシステムを実現できるかどうかを重視したのである。
一方で、社員に対しては「中途半端にITの知識を身に付ける必要はない。会社の事情を一番分かっているのは社員なのだから、専門家に任せっきりにするのではなく、とにかく自分たちがどうしてほしいのか伝えなさい」と指示した。
社員と外部の専門家、そしてベンダーが三位一体となったシステム開発は一年に及び、その後、情報の一元管理と共有化、顧客満足度の向上につながっている。
先ほど挙げたさまざまな情報管理のほかに、機能の一端を紹介しておこう。同社では住宅の建築後、アフターサービスのため、定期訪問を実施している。「ひまわり君」では、顧客情報の中に訪問記録やリフォームの履歴が管理できるようになっており、一定期間、訪問していない場合はアラームが発せられるようになっている。住宅は顧客と何十年という長い付き合いになる商品だが、担当者が変わったり、辞めたりした場合、アフターサービスがおろそかになる可能性がある。同社では、このシステムによって、それを防ぐことを可能とした。
加葉田社長は「ITで飛躍的に効率が上がるわけではない」としながらも、「情報を活用して、真の経営改善や顧客満足につなげていきたい」と話している。
企業名 | 株式会社 ひまわりほーむ |
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創業・設立 | 設立 平成8年8月 |
事業内容 | 木造注文住宅、増改築の設計、施工 |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.36より抜粋 |
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掲載号 | Vol.36 |