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企業活動で生じた問題を解決する製品開発や他社とは一味違った独創性に富んだ発想で開発された新製品について、今回は、3社を取り上げて開発のポイントや市場からの反響を聞いた。
工作機械で金属を加工した際に出る切削屑を搬送するチップコンベヤを主力とするヨシダ鉄工は、「メッシュクーラントコンベヤ」を新たに開発した。
切削屑は通常、加工部位を適当な温度に冷やすクーラント液と一緒に排出される。この製品のコンベヤは細かな網状になっているため、切削屑だけがコンベヤ上に残って排出され、クーラント液は浄化装置へと流れ込む仕組みになっている。
現在、チップコンベヤの主力はメッシュドラム式と呼ばれ、円筒型の金網でクーラント液の中から切削屑をすくい上げる仕組みである。しかし、このシステムでは長い切削屑がからんでトラブルの原因となる、アルミなど比重の軽い切削屑をすくいにくいといった欠点があった。
こうした欠点を克服しようと吉田孝雄社長が工夫を重ねたのが「メッシュクーラントコンベヤ」である。長い切削屑も微細な切削屑も1台で処理できるほか、アルミやチタン、マグネシウムなど、近年多用される軽量素材の切削屑に対応する。コンパクトな構造で、複合加工機にも簡単に装着可能となっている。
同社は昭和60年代以降、各種コンベヤのほか、立体駐車場装置や産業廃棄物処理機などを手がけてきたが、平成13年、長引く不況やアメリカ同時多発テロなどのあおりを受け、経営が厳しくなったため、業界で認知度の高かったコンベヤに経営資源を集中させ、再建に取り組んできた。
吉田社長は生き残りをかけ、他社と差別化した製品開発に注力。平成15年には、部品点数が少なくシンプルな構造で故障が極めて少ない「エプロン式チップコンベヤ」を開発し、多くのユーザーから高い評価を得たほか、金属加工機械大手の(株)アマダにも採用された。
「メッシュクーラントコンベヤ」も自動車部品大手のアイシン精機(株)において、本格導入に向けた実験が進んでいる。評判は口コミで広がり、全国から視察団が訪れているという。
「小さい企業なので開発の専門部署はなく、失敗作も多い」と苦労を話す吉田社長、しかし、「アイデアと技術を伸ばして、コンベヤメーカーとして存在感を発揮したい」と意欲を燃やしている。
このメッシュクーラントコンベヤは、今年度、石川ブランド優秀新製品の機械部門で金賞を受賞。審査員からは、金属加工屑と加工液を効率よく分離し、メッシュ部分の目づまりが少なく交換も容易であることなど、メンテナンスもしやすく、ユーザーの立場から開発された製品との評価を得た。
企業名 | 合同会社 LNSジャパン |
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創業・設立 | 設立 昭和56年10月 |
事業内容 | 各種チップコンベヤなどの開発、製造 |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.35より抜粋 |
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掲載号 | Vol.35 |