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企業活動で生じた問題を解決する製品開発や他社とは一味違った独創性に富んだ発想で開発された新製品について、今回は、3社を取り上げて開発のポイントや市場からの反響を聞いた。
C-GRIPの開発した「Coda- DTV Broadcaster」は、データ放送用のコンテンツを制作、放送するためのツールである。現在、テレビ金沢に導入されて地域情報やイベント情報の提供などに活用されており、日本全国のテレビ局からも引き合いが来ている。
データ放送とは放送用電波の隙間を使って、各種情報を提供するサービスのこと。地上デジタル放送では、通常のテレビ放送の他にリモコンのボタンを押すだけで、画面上に、地域の天気予報や電子番組表などの入ったデータ放送をいつでも呼びだすことができる。
地上デジタル放送は現在、全都道府県の県庁所在地において視聴可能で、高画質・高音質のテレビ番組を楽しめるようになっているが、データ放送については遅々としてコンテンツ制作が進んでいないのが現状だ。
その原因となっているのがデータ放送で必要となるBMLというプログラミング言語である。ホームページ制作に使われるプログラミング言語HTMLと違って、BMLは精通した人材が少なく、ソフトも高価なため、制作コストが高く、長期の制作期間を要する。
こうした問題を解決してくれるのが「Coda-DTV Broadcaster」である。HTMLで制作したものをBMLに自動変換してくれるので、BMLのプログラミングに関する知識がなくても、ホームページを制作するような感覚で簡単に素早くデータ放送用のコンテンツを制作できる。しかも、大手システムベンダーが開発する制作、放送機器に比べて導入費用は約1/5に抑えられるという。
「Coda-DTV Broadcaster」の大きな特徴は、データベースの連携機能にある。これ1台あれば、さまざまなシステムベンダーが開発した独自のデータベースからデータを抽出したり、受信できるため、人の手を介在させることなく、タイムリーな番組制作が可能になる。
例えば、今年4月の統一地方選挙の際には、NNN(日本テレビ系列によるニュースネットワーク)のデータベースと接続して開票速報を実施。他局のデータ放送はもちろん、アナログ放送の文字テロップよりもスピーディーに開票情報を放送した。
テレビ金沢編成技術本部技術センターの大川智之技術部次長は「たくさんのコンテンツを作った上で、視聴者の意向を汲んでいいものを残していきたい。そのためには安くて早く作れることが重要なので、非常に重宝している」と話す。
一方、「データ放送を活用すればテレビ局の新たな収益モデルを構築できる」と語るのは黒口社長だ。将来的には、「データベース連携機能によって、ウェブ上で実現しているビジネスモデルがそのままデジタルテレビで展開できる」と自信をみせる。つまり、銀行や航空会社、自治体のデータベースと家庭のデジタルテレビを結ぶことで、ネットバンキングや航空券などの予約・決済代行、公共施設の予約なども、自宅にいながらにしてできるというわけだ。
データ放送に対するテレビ局の取り組みは、まだまだこれからが本番である。C-GRIPの技術はデータ放送の新たなスタンダードとなる可能性を秘めていると言えそうだ。
この「Coda-DTV Broadcaster」は、平成18年度の「産学・産業間連携新豊かさ創造実用化プロジェクト推進事業」の対象事業となり、今年度は、石川ブランド優秀新製品の情報産業部門で金賞を受賞した。審査員からは、地上デジタルテレビ放送の推進という時代背景を的確に捉えたBML変換技術は新規性と市場性が認められ、地方テレビ局のビジネスモデルとなり得る革新的なものとの評価を受けた。
企業名 | 株式会社 C-GRIP |
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創業・設立 | 設立 平成16年2月 |
事業内容 | コンピュータソフトウェアの開発 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.35より抜粋 |
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掲載号 | Vol.35 |