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石川県には、キラリと光る技術を持つ企業がたくさんあります。
そういった技術力を認められ、県外企業からも幅広く受注に成功しているものづくり企業の成長戦略を紹介します。
和惣菜の缶詰、レトルト食品などを製造、販売しているシンヤは、ISICOの専門家派遣制度を活用して、衛生管理の向上に取り組んでいる。
専門家派遣制度とは、企業経営や技術開発における問題解決を図るため、ISICOが目的に応じて最適の専門家を派遣し、具体的、実践的なアドバイスを行うというもの。企業は、必要経費の1/3を負担するだけで利用できるメリットがある。
「消費者はもちろん、大手スーパーなど流通業者が求める衛生管理レベルは、年を追うごとに高まっている」と話すのは同社の新屋弘治専務取締役だ。食品を提供する企業として、こうしたニーズに確実に応えようと、平成17年4月から衛生管理の専門家を招いてアドバイスを受けることにした。工場点検を手始めに、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底、防虫対策、異物混入対策、従業員教育など、月に1度、専門家に指導を仰いだ。ISICOの専門家派遣制度利用終了後も、自社で専門家を招き、指導を受けている。
新屋専務は「回を重ねるごとに知識が増え、意識も変わった。流通業者などが工場の視察に訪れた際もほめられることが増えた」と話し、レベルアップの手ごたえを実感している。
シンヤの主力商品は、「治部煮」「ふぐのぬか漬け」など、地元の郷土料理を中心とした和惣菜だ。「ふくら屋」のブランド名で多くの支持を集め、現在ではその商品ラインアップはおよそ150種にも上る。中でも、「たらの子のうま煮」は大正時代からのロングセラーで、レトロなデザインの缶詰は今でも根強い人気を誇っている。
どの商品も、長年経験を積んだ職人が手づくりするのがシンヤの特徴だ。天候や素材の状態を見極めながら、塩加減や火加減を調整。近年主流となっている蒸気釜ではなく、直火の釜でじっくりと炊き上げていくことで、昔ながらの味を守り続けている。
伝統の味と製法を守り続ける一方で、新商品の開発にも余念がない。その一つが平成16年から発売している「加賀のおかゆ」である。五郎島金時や加賀棒茶など、地場の農産物を使用したレトルト商品で、健康志向を反映し、自宅用あるいはギフト用として売り上げを伸ばしている。
自社商品開発の傍らで、近年では、確かな技術が評価され、OEM生産も増えてきた。例えば、2年前からは大阪の大手ホテルの朝食バイキング用に、ホテルシェフのこだわりの味付けを正確に再現した和惣菜を提供している。自社商品の開発、あるいはOEM生産に向けた試作は年間50品を下らないという。
ベテラン職人の技術に裏打ちされた確かな味と、専門家に指導を取り入れた確かな安全性。食品メーカーに欠かせない二つの要素を土台に、シンヤは成長を続けていく。
企業名 | 株式会社 シンヤ |
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創業・設立 | 設立 明治43年10月 |
事業内容 | 缶詰、レトルト食品、佃煮等の製造、販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」Vol.35より抜粋 |
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掲載号 | Vol.35 |