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「和座本舗」では自社サイトのほか、大手ショッピングモールの楽天市場、Yahoo!ショッピングにも出店し、現在3店舗を運営している。ネット通販による年商は5,500万円で、会社全体の8割を占める。今年3月には、特定非営利活動法人全国イーコマース協議会が主催する「1000人の店長が選んだベストECショップ大賞2006」で大賞に輝いた。
消費者はもちろん、同業者からも認められる人気ショップのオープンは平成12年3月のことだ。ショップの母体は昭和44年から九谷焼を販売してきた九谷物産である。法人向けギフト商品のカタログ販売を主力としてきた同社は、バブル以降、売り上げが低迷。「売れないところでもがくより、売れる市場に出て勝負したい」。西田代表はそう考えてネット販売に乗りだした。
確かにそれまで営業対象としてきたデパートや百貨店には大勢の来客がある。しかし、食器、それも九谷焼が目当てとなれば、それはほんの一握りに過ぎない。それならば食器や九谷焼を探している人と直接コミュニケーションできるネットを活用しようというわけだ。
当時から伝統工芸品はネット販売に適さないと言われていたが、西田代表は「九谷焼の魅力は絵柄やデザイン。実物を手に取らなくても買ってくれる」と考えていた。そこでネットショップには、忠実な色の再現、商品の立体感などを念頭に自ら撮影した写真を、商品1点につき3~4点掲載した。合わせて、作家の情報やこだわり、商品の背景にある物語性を自身の言葉で紹介した。どちらも、スペースの限られた紙のカタログでは難しかったことだ。
さらに、一度利用してくれた顧客と太く、長く付きあうため、メールマガジンを頻繁に発行するなど、継続的に商品情報を提供。顧客が増えてくると、購買力に応じてセグメントし、それぞれのニーズに応じた情報を発信し、購買意欲をより刺激した。
こうした取り組みが実を結び、一度購入してくれるとほとんどの人がリピーターになってくれた。メールマガジンの登録者数は現在、55,000人を数える。
売れる商品を作るため、西田代表は和食器プロデューサーとしての役割も発揮している。
例えば、老舗の窯元に市場のニーズを汲んだデザインを提案して新作を作ってもらったり、サイト内では技術のある若手作家にスポットを当てている。また、数ある商品の中から季節に応じて茶碗や皿、湯飲みなど、複数のアイテムをコーディネートし、セット商品として提案することもある。
ネットショップの運営が軌道に乗った今、これからのビジョンとして掲げるのは、実店舗のオープンだ。九谷物産では2年前、能美市内にあった店舗を閉めたが、顧客の多い東京や大阪にアンテナショップを出店することで、ネットショップとの相乗効果を狙う。
また、ネットで成功した手法で、既存のカタログも再生できないか検討中だ。九谷焼をいかに販売するか。西田代表は、「和座本舗」のブランド確立に今日も思いを巡らせている。
企業名 | 九谷物産 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 昭和44年11月 |
事業内容 | 九谷焼販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.28より抜粋 |
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掲載号 | vol.28 |