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巻頭特集
それぞれの強みを生かす! ”戦略的連携”を競争力の源泉に
異なる得意分野を持つ企業同士が、お互いに技術やノウハウを補完することで、 新たなビジネスチャンスに挑もうとする“戦略的連携”に注目が集まっている。
経営資源の限られた中小企業にとっては、こういった取り組みによって開発力の不足を補うほか、 商品化までのスピードアップ、研究開発にかかる負担軽減も期待できる。
戦略的連携を通して、単独ではできなかった販路拡大や付加価値の高い製品開発を試みる県内企業2社にスポットを当てた。
新連携事業として北陸で初めて認定
昨年9月、小松プロセスなど5社が協力して取り組む新連携事業が始動した。この事業は、複数の中小企業が連携して製品開発や販路開拓などに取り組む試みを国が認定し、補助金や税制、金融、経営指導などで総合的にサポートする制度である。北陸では同社の案件が第1号認定となった。
小松プロセスが申請したのは、「高い夜間視認性を有するフルカラーの再帰反射性インク・塗料の販路開拓」である。小松プロセスを事業の中核となるコア企業とし、長瀬カラーケミカル(株)(大阪府)、丸紅シーエルエス(株)(大阪府)、(株)IDT日板(東京都)、カラービーズメーカーの4社が参画している。
小松プロセスとコンクリートの表面処理などに日本有数の技術を持つIDT日板などが製品を進化させる役割を担う。染料や化学工業薬品などを仕入販売する長瀬カラーケミカル、人工皮革「クラリーノ」など各種素材の加工・販売を手がける丸紅シーエルエスが、そのネットワークを生かして新しい販売ルートや用途を開拓する。
繊維業界への危機感からオリジナル製品を開発
設立以来、繊維素材のプリント印刷に使用されているスクリーン製版、染料の配合を主力業務としてきた小松プロセスが、暗い場所で光が当たると反射するカラーインクを開発したのは平成11年のことだった。
低コストの中国製品などとの競合を強いられる繊維業界にあって、「この先、糸作りから縫製まで、一貫して中国でやるようになれば、日本での商売が成り立たなくなる」(松浦宏明社長)と危機感を募らせたのがきっかけだった。
カラーインクとは、微小のガラスビーズと反射材、接着用樹脂を混ぜ合わせたものだ。ライトで照らすと、光が照射方向にはね返り、光源部側にいる人に対して優れた視認性を発揮するのが特徴だ。通常、反射性のインク・塗料と言えば、銀色のものしかなかったが、独自の製法で色素を配合して、白、黒、赤、青、黄など、10色を展開。各色を混ぜてバリエーションを広げることも可能だ。
当初は衣料や布製品向けの印刷用インクとして開発したが、コンクリートや鉄、木材など幅広い用途への展開をにらんで、平成16年には、産業用の塗料「ブライトコート」として改良を加えた。
飛び込み営業が奏功しJR西日本などが採用
松浦社長は、製品力には自信を持っていた。市場には、シート状の反射材は多くあるが、表面に凸凹のあるコンクリート製の構造物や立体的な曲面を持つヘルメットなどには貼りにくく、はがれやすい。その点、塗料なら刷毛やローラーで塗れ、スプレーガンによる吹き付けも可能なことから、使い勝手の良さで市場に入り込む余地があると考えた。
営業は、松浦社長自らが飛び込みセールスに出向いた。それまでは、他の企業から依頼を受けて製品をつくる受託加工がメインだったため、品質管理と納期さえしっかり行っていれば、営業要員は必要なかったのだ。
夜間に抜群の視認性を得られるという特性を最大限に生かすため、事故防止や安全確保に力を入れている企業にターゲットを絞り営業を展開した。とにかく効果を実感してもらおうと、あちこちに無償で塗装に出かけた。踏み切りにある防護柵やトンネルの防護工など、事例をたくさん積み上げていくことで、現場のスタッフたちに製品の良さを認識してもらった。
その結果、昨年1月にはJR西日本(大阪市)が安全対策用の塗料として正式に採用したほか、現在までに首都高速道路公団や大手私鉄が導入を決めている。
2年後に1億円の売り上げを目指す
これまで一人で営業を担ってきた松浦社長だが、今回の新連携事業によって「全国的な販売網を持つ商社と連携することで、より速く、よりたくさんの企業に製品を提案できる」と、新たな販売ルートの確立に期待を寄せている。
現在は月に一度、連携企業が集まって会議を開き、販売戦略について議論を重ねると同時に、住宅建材や繊維雑貨などさまざまな用途への展開を考え、新たな製品開発を進める。
反射性インク・塗料の売上高は年間約1,000万円だったが、この連携を力に「2年後には年間1億円の事業に育てたい」と意気込んでいる。
企業名 | 株式会社 小松プロセス |
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創業・設立 | 設立 昭和45年11月 |
事業内容 | 超微粒子化分散品、再帰反射性カラーインク・塗料の製造販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.27より抜粋 |
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掲載号 | vol.27 |