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新たなものづくり技術やサービスの開発に挑戦する中小企業を支援する補助金の代表格とも言えるのが中小企業庁の「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」(以下、ものづくり補助金)だ。試作や設備投資などにかかった原材料費や設備費、人件費などの費用を、1,000万円を上限に3分の2まで助成する仕組みで、資金力に乏しい中小企業の強い味方となっている。今回の特集では、ISICOがものづくり補助金申請にあたって事業計画策定をサポートし採択された中から、成果を挙げている3社の取り組みを紹介する。
四季の移ろいを感じる4つの庭園、金沢の食材を使った朝食、若手作家の工芸作品を配した廊下など、「上質な空間と時間を感じられる金沢の別邸」をコンセプトに観光客にくつろぎのひとときを提供する金沢彩の庭ホテル。生コンクリートの製造、販売を手がける高田産業グループの新事業として平成27年3月に開業以降、旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の「朝食のおいしいホテルランキング2017」で5位に選ばれるなど評判は上々で、高い客室稼働率を維持している。
同ホテルのサービスを支えているのが、開業時にものづくり補助金を活用して導入した各種のシステムや機器だ。その一つである宿泊システムは各種予約サイトと連動しており、予約・変更・キャンセルの情報がその都度、自動的に反映されるようになっている。多くのホテルでは、予約サイトで入力された情報をホテルの宿泊システムに入力し直したり、紙台帳に転記したりすることが必要だが、このシステムによって、そういった手間が軽減される。その分ホテルのスタッフは、宿泊客のニーズに応じて飲食店や観光コースを提案したり、記念撮影を手伝ったりするなど、宿泊客へのおもてなしに専心できるというわけだ。
また、顧客管理システムでは宿泊客の名前と電話番号で、ベッドや枕の好み、アレルギーの有無など、過去に利用した際の情報を確認できるようにした。これによって、リピーターに対して、より的確なサービスを提供することが可能になった。
顧客満足を高める工夫はまだまだある。チェックアウト時の混雑をなくすため、宿泊料金はチェックイン時に前精算する方式を採用したこともその一つで、ものづくり補助金を活用して、フロントには固定・モバイルを合わせて4台の宿泊システム用端末を導入したほか、客室用カードキーを発行する機器も3台そろえ、少ない待ち時間で対応できるようにしている。
ちなみに、カードキーには部屋番号が記載されないため、もし紛失したカードキーを誰かに拾われた場合も簡単には侵入されないほか、フロントに紛失したことを届け出れば、鍵を無効化できるので、宿泊客の安心につながっている。
このほか、カードキーを差して、照明などの電源を入れる客室内のカードキーホルダーを利用し、宿泊客の在室状況や客室の清掃状況をモバイル端末でリアルタイムに確認できるシステムも独自に構築した。
従来のホテルでは各フロアに設置した表示盤でその都度在室状況を確認しながら、清掃に取りかかっていたが、モバイル端末でどこにいても確認できるので清掃の効率化が実現した。清掃開始・完了時の報告もモバイル端末で可能になり、フロントと清掃員の情報共有もスムーズになった。これによって、チェックインが14時、チェックアウトが11時と宿泊客はゆっくりと客室を利用できるようになっている。
おもてなしの充実、顧客満足の向上を図り、高稼働率を維持していくために、これからもものづくり補助金を活用して導入した各種システムや機器が大活躍するに違いない。
企業名 | (株)金沢彩の庭ホテル |
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創業・設立 | 設立 平成26年6月 |
事業内容 | ホテル運営 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.98 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.98より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.98 |