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新工場への移転を機に専門家と連携 効率化や品質アップを実現 ~長崎産業(株)

印刷ページ表示 更新日:2018年2月15日更新

From USERs 各種支援制度の利用者に聞く

北信越5県と岐阜・愛知から米ぬかや玄米を集荷、販売する長崎産業。これらに続く収益の柱として力を入れるのが漬物用のぬか床などとして使われる煎(い)りぬかの製造、販売で、平成27年1月には白山市相川町から同市宮永町に工場を移転し、新たに大型焙煎(ばいせん)機などを導入した。同社ではこれに伴って、ISICOの専門家派遣制度を活用し、新工場の効率的な運用や製造に携わる人材の育成につなげている。​​

月400トンを集荷 震災後に注文が急増

昨年末に導入した新型充てん機の写真。 長崎産業が白山市宮永町に構える工場は延べ床面積が約990平方メートルで、旧工場のおよそ2倍の広さだ。長さ10メートル以上もある回転式のドラムで米ぬかを焙煎する大型機器と香ばしさを際立たせるために深煎りすることができる平釜を備え、原材料の保管から加工、充てん、検品、出荷まで、必要な機材を直線上に配置し、生産効率を大幅にアップさせた。
 米油やエノキの菌床などの原材料として使われる米ぬかを月間400トン集荷する同社が煎りぬかの製造をスタートさせたのは平成19年のことだ。東日本大震災による福島第一原子力発電所事故が起きると、放射能による汚染がなく、トレーサビリティーのしっかりとした煎りぬかとして、注文が数多く寄せられるようになった。
 長崎成任衛(なおえい)社長が3年前に全国ぬかづけのもと工業会の会長に就任してからはネットワークが広がり、大手流通企業からの生産委託も増加。次第に工場が手狭になったことから、平成27年に移転に踏み切った。​

設備を直線上に配置 生産がスムーズに

 新工場への移転に伴い、同社ではISICOの専門家派遣制度を活用し、工場改革に関して豊富な実績を有する専門家のアドバイスを受けながら、準備を進めた。
 専門家の助言が役立った一例に工場のレイアウトがある。同社が従来使っていた工場は倉庫の一角を仕切ったものだった。人手が頼りの小さな釜からスタートし、空いたスペースに機械を買い足しながら設置した結果、工程間のつながりが悪く、原料を焙煎室に運び込むために何度も扉を開け閉めしなければならないなど、決して使い勝手がいいとは言えなかった。
 そこで新工場では、米ぬかの釜への投入、焙煎、虫や異物の除去、トウガラシや塩の混合、充てん、賞味期限の印字、検品、出荷という一連の生産工程がスムーズに進められるように一直線に機材をレイアウト。同時に米ぬかの釜への投入を自動化したり、ボタン一つで作動する大型焙煎機を導入したりして自動化、機械化を図った。その結果、焙煎工程は従来の2人から1.5人へ、充てん工程は2~3人から1~2人へと省力化することができた。
 また、製造ラインの構築に当たっては、設備メーカーや電気工事会社の選定や発注はもちろん、長崎社長自身が専門家の指導を仰ぎながら作業工程やスケジュールの管理など、施工管理者としての役割を果たし、コストダウンにつなげた。

クレームの見える化で対策が立てやすく

 新工場が安定して稼働するようになってからは、専門家とともに品質管理レベルの向上などに取り組んでいる。その一つがクレームの原因究明と対策だ。
 同社ではこれまでもクレーム内容を記録していたが、過去のデータが有効活用されているとは言えなかった。そこで、専門家の助言を受け、クレームの原因と件数、発生時期を一目で把握できるようグラフ化して対策に役立てた。
 クレーム原因として最も多かったのは虫の混入だ。通常、虫は焙煎後に振動ふるい機によって取り除かれるはずだが、よく調べてみるとごく小さな虫の場合、ふるいに掛かる角度によっては網目をすり抜けてしまうことが明らかとなった。もちろん、網目を細かくすれば解決するのだが、それでは生産効率が悪くなってしまう。そこで同社では網目を細かくするだけでなく、独自の工夫によって生産効率を落とさず、虫を取り除くことに成功した。
長崎成任衛社長の写真。 次に多かったのは賞味期限の印字のかすれやパッケージがしっかりと密封されていないといった充てん工程に関するクレームだった。これを解決するため、同社が平成28年末にISICOの支援のもと、ものづくり補助金を活用して導入したのが新型充てん機だ。これによって、従来は人の目に頼っていた印字やパッケージの不良をカメラで自動的にチェックできるようになり、今後本格的に運用されれば、クレームの低減、作業効率の向上が実現する見通しだ。
 ところで、こうした製造に関する課題を抽出し、専門家と意見を交わしながら解決策を探り、実践するという取り組みの中心を担っているのが二人の若手社員だ。その狙いは製造現場におけるリーダーの育成で、長崎社長は「経営感覚を持った製造部門をボトムアップで作り上げてほしい」と期待をかけている。

HACCP導入を見据え5S活動の徹底へ

長崎産業が製造、販売する漬物用のぬか床の写真。

 同社にとって、今後の課題となるのが食品衛生管理の国際基準「HACCP」への対応だ。HACCPは原材料の受け入れから加工、出荷までの各工程で健康被害を引き起こす要因を継続的に監視、記録する衛生管理の仕組みで、近い将来、すべての食品事業者に義務化される見通しとなっている。もちろん同社でも対応が必要となるため、まずは専門家の指導の下、HACCP導入の基礎となる5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底に取り組んでいる。
 一方で長崎社長は「HACCPに対応し、衛生レベルを向上させていくには相応のコストが必要だが、売値には転嫁できない。売値を据え置いたままで収益性を上げていくには効率アップしかない」と今後は新工場の生産力をさらに引き出し、一層の効率化を図る。
 さらに将来的には、ビタミンB類やビタミンE、抗がん作用が期待できるフィチン酸など、栄養成分や機能性成分を豊富に含む米ぬかの特徴を生かし、ぬか床だけでなく、菓子材料などの用途でも販路拡大に取り組む考えだ。​

企業情報

企業名 長崎産業(株)
創業・設立 設立 昭和60年5月
事業内容 米ぬか・玄米の集荷、煎りぬかの製造、販売など

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備考 情報誌「ISICO」vol.98より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.98


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