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大手の女性用下着メーカーやアウトドア用品メーカーにゴム入り細幅織物を納入するなど、確かな縫製技術で信頼を築いてきたマルマツ繊維。独自に開発した縦横に伸びる生地「QFC」が順調に売り上げを伸ばしており、ISICOのサポートを得て、弾力を高めた改良品の開発も進めている。特に、近年はスポーツや介護といった市場への進出を見据え、増産体制を整えている。
ゴム入り細幅織物には、縦には伸びるが、横にはほとんど伸びないという特徴がある。それは、縦糸にはゴム製の糸を使い、横糸には伸縮性のない一般的な糸を使用するからだ。
これまでも縦横に伸びる織物の需要はあったが、全国でもそういった生地はほとんど生産されていなかった。そこで同社が10年前に開発したのが横にも伸びるQFCだ。
QFCは、縦糸と横糸に伸縮性を備えた熱融着ウレタン糸を使用しているので、縦方向にも横方向にもストレッチ性がある。また、加熱処理によって糸同士がくっついていることから、縦、横、斜めなど、どのように裁断してもほつれにくいという利点もある。
同社では、このような特徴を持つQFCに可能性を感じた山屋産業(株)(津幡町)と連携し、約5年前から製品化を進めている。
例えば、厚さ1mmという超極薄のQFCを使った骨盤サポートベルトは、しっかりと腰を支え、耐久性に優れた商品だ。従来の生ゴムを使用したベルトと違って洗濯できる点もメリットである。このベルトを織るには、同社がそれでまで所有していた織機では対応できなかったことから、ISICOの設備貸与制度を利用してニードル織機を導入し、生産体制を整えた。
また、バレエなどで関節を柔らかくするトレーニングなどに使うコンプレッションバンド(幅10cm、長さ1m)と呼ばれる生地にもQFCが採用され、一時は生産が間に合わないほど人気を集めた。
これらのベルトやバンドはゴム製で、「肌に食い込んで痛い」「ゴムの匂いが気になる」「ゴムが劣化して切れる」といった声があり、QFCに変えることで、不満の改善につなげている。
このほか、介護や農業、運送、製造、建設などの業界で重宝される腰部サポートウェアにもQFCが採用されている。前屈・中腰姿勢をサポートするとともに、作業負担を約20%軽減することができる点が支持され、売れ行きも好調だ。
マルマツ繊維の松井宏充社長は「山屋産業とスクラムを組むようになってから、用途が広がった。今ではQFCが全体の売り上げの20%を占めるまでに成長している」と目を細める。
ただ、先ほど紹介したコンプレッションバンドは、男子スポーツ選手が使用する場合もあるのだが、その際、引っ張る力が強すぎて生地が元の形状に戻らずに弾力を失ってしまう欠点があった。そこで、ISICOの活性化ファンドを活用し、QFCの改良に取り組むことにした。
改良では、弾力アップに主眼を置いた。布を2枚、3枚と重ねれば強度はアップする。しかし、それでは厚くなってしまうので、厚みをできるだけ変えず、糸と織り方を工夫することで問題を解決する方法を考案した。すでに織機の手直しは終えており、今年中にはサンプルを完成させたい考えだ。
ゴム入り細幅織物は現在、かほく市が全国生産量の約65%を占め、国内最大の産地である。ただ、近年は、中国を中心としたアジア諸国との価格競争で苦戦している。大手女性用下着メーカーと国内最大手のアウトドア用品メーカーに長年、製品を納入してきたマルマツ繊維も例外ではない。
こうした状況に危機感を募らせた松井社長が打ち出したのが「小ロットを圧倒的に早く、圧倒的に安く」というスローガンだ。
ゴム入り細幅織物の生産では、多くの工程を外注に委託しているため、外注費によるコスト高などが生じていた。
そこで、外注していた全工程を内製化し、一貫生産体制を整備。この結果、納期は50%短縮し、コストも10%削減できた。松井社長は「私たちが変わる努力をしなければ生き残ることはできない。挑戦する気持ちが大事だ」と話す。
現在、下着が同社の売り上げの80%を占めているが、このような一本足経営では将来的に不安があることから、松井社長は、QFCを前面に押し出してスポーツや介護、健康など異なる分野への進出を加速させたい考えだ。
国は“スポーツ立国”と“健康寿命”の実現に力を入れており、松井社長は「QFCをゴムの代替品として売り込み、この分野の売り上げを50%アップしたい」と話し、成長の原動力として育てていく考えだ。
企業名 | 有限会社 マルマツ繊維 |
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創業・設立 | 創業 1960年 |
事業内容 | ゴム入り細幅織物の企画・試作・製造・染色・販売、横巻きゴム糸(カバーリング糸)の製造加工 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.101より抜粋 |
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掲載号 | vol.101 |