本文
少子高齢化が進み、労働力不足が課題になっている昨今、働きやすい職場環境を実現できるか否かは、技術開発や販路開拓などと並んで企業の発展に関わる重要な問題と言える。「性別や家庭の事情に関係なく能力を生かすことができる」「若い人材が会社に定着して活躍できる」「健康的で安全に働くことができる」。今回の特集では、そんな職場を目指し、意欲的に改善活動に取り組んでいる県内企業3社の事例を紹介する。
測量を手がける北日本ジオグラフィでは約3年前から社員主導による委員会活動を通じて、働きがいと働きやすさを追求している。
委員会は「職場環境」「広報」「技術向上」「社会貢献活動」の4つでそれぞれ部署や役職、年齢の異なる5、6人で構成する。委員会活動では業務中に接する機会のない社員ともざっくばらんに話し合うため、部署や世代を超えたコミュニケーションが活性化。風通しの良い職場環境が醸成され、家庭の事情などで急に休みが必要になったときも、相談しやすい環境になっている。
委員会の成果の一端を紹介しておくと、職場環境委員会では、女性社員が2名から6名に増加したのに合わせ、従来は男女兼用だったトイレのうち一つを女性専用にした。また、社屋内の一部で認めていた喫煙を全館禁止とし、屋外に新たに喫煙スペースを設けた。
広報委員会ではホームページの記事を更新したり、社屋内に社内行事の写真を掲示したりするなど、社内外への情報発信に努め、技術向上委員会は社内勉強会の開催や新たな技術情報の共有などに取り組んでいる。
社会貢献委員会では、能登島のオリーブ畑でのボランティア作業、近隣の小学校での測量体験学習、会社周辺の清掃活動などを企画、運営。地域に貢献することが社員にとって誇りの持てる、働きがいを感じられる会社づくりにつながっている。
同社が委員会活動に取り組み始めたのは、新卒採用の再開が目的だった。測量業界は公共事業の減少によって市場が伸び悩んでいることなどから、同社では15年以上前から新卒採用を控えていた。しかし、磯野秀和社長が就任した2008年以降、単に測量するだけでなく、測量データを農地管理や施設管理、福祉などに生かすデータ活用型事業に注力するなどして業績が向上。会社の将来を考えれば若い人材の獲得は不可欠であり、そのためにまずは受け入れ体制を整えようと4年前に社内でグループディスカッションを実施し、何をすべきか意見を交わした。
これを受け、「歴史と実績がある」「技術力が優れている」「人間関係がいい」など、社員が感じる会社の魅力にさらに磨きをかけようと、「社会・家族に対して誇れる会社であり続ける」という企業理念を定め、理念を具体化するために4つの委員会を設けた。
採用活動は順調で2015年以降は毎年2名の新卒者が入社。人間関係はさらに円滑になり、全員が定着している。技術力も一層向上し、国土地理院がホームページで発表している優良業務表彰を見て、県外から応募してきた女性もいる。
磯野社長は「これからもボトムアップによる意見を大切にしたい」と話し、社員の声を生かしながら会社の継続的な発展を目指す。
企業名 | (株)北日本ジオグラフィ |
---|---|
創業・設立 | 創業 1952年4月 |
事業内容 | 測量業務全般、GIS(地理情報システム)、UAV(ドローン)測量、三次元測量 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.104 |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.104より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.104 |