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ISICOの支援メニューを活用しながら、創意工夫を凝らした取り組みで業績の向上や業容の拡大を果たした県内中小企業の中から、モデル事例として7社を紹介します。
日本を代表する大企業がしのぎを削る自動車製造は、幅広い産業に活力を与える“動脈産業”です。ただ、血液を運ぶ動脈だけで人が活動できないように、産業にも全身を回った血を集め、それを再び生かす静脈が必要です。その重要性に注目し、自動車業界に“静脈産業”を構築したのが会宝産業です。
同社が担うのは、使用済み車両から鉄やアルミなどの素材だけでなく、エンジンやタイヤ、ライトなどを取り出し、中古車の修理部品として輸出する自動車リサイクルです。国産車は走行距離10数万キロで廃車になることが多いのに対し、海外では30万キロを走る車も珍しくありません。そのため、海外から見れば廃車となってもまだ使える部品が多く、同社ではそんな“宝”に光を当てたビジネスモデルを確立しました。世界88カ国への輸出実績があり、海外での売り上げが80%を占めるグローバル企業として成長を続けています。
加えて、海を越えた自動車リサイクルを通して、廃油や廃プラスチック、廃タイヤの適切な処理技術・設備を世界に広げている点も特筆に値します。環境問題の改善に貢献する同社の事業は、持続可能な社会の実現を目指し国連全加盟国が合意した国際目標「SDGs」の理念に合致しており、2018年12月には「第2回ジャパンSDGsアワード」のSDGs推進副本部長(外務大臣)賞を受賞しました。
自動車リサイクルを確立する上で、大きな役割を果たすのが、同社独自の「KRAシステム」です。KRAシステムは、部品一つ一つに年式や状態などを記したバーコードを貼って在庫管理に生かすもので、自動車部品のトレーサビリティーと言えます。世界から信頼されるKAIHOブランドを築く上で不可欠なシステムであり、開発にあたってはISICOも技術面などからアドバイスを行いました。
「石川を代表する企業から意見をもらう『こぞくら委員会』や活性化ファンドなど、ISICOにはこの20年間、いろいろとサポートしていただきました。今後も心強いパートナーとして、県内企業の成長を支えてほしいと思います」と、近藤典彦会長はエールを送ります。
また、一代で自動車業界の静脈産業を築いた近藤会長は、今後のビジョンとして“下山の経営”を掲げています。「これまではどの業界も上を見た登山の経営でしたが、人口減少が進む今、拡大路線だけでは近い将来、行き詰まるのは明白です。今後のキーワードは“環成経(完成形)”。環境を汚さず、守ることで成長していく経営に舵を切っていく必要があります」。
近藤会長がこう話すように、同社では自動車リサイクルに加え、農園を立ち上げて自然栽培に乗り出すなど、環境にやさしい農業にも注力しています。静脈産業のトップランナーとして未来を見据えた取り組みが活発化しています。
企業名 | 会宝産業 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 1969年5月 |
事業内容 | 使用済み自動車の引き取り・解体・破砕前処理、中古車・中古自動車部品の輸出販売 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.106より抜粋 |
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掲載号 | vol.106 |