ISICOの支援メニューを活用しながら、創意工夫を凝らした取り組みで業績の向上や業容の拡大を果たした県内中小企業の中から、モデル事例として7社を紹介します。
エンジン部品などアルミ・マグネシウム鋳物の製造・加工を手掛ける谷田合金。近年は、航空機部品と半導体製造装置向け部品が好調で、2009年からの10年間で売り上げを2倍に伸ばしています。
中でも航空機部品に参入するきっかけとなったのが、同社が持つ「差圧鋳造」と呼ばれるアルミ鋳物の鋳造技術です。アルミ鋳物は通常、微細な気泡を多く含み、これが強度不足の原因になりかねません。その点、大気圧の7~8倍に加圧した環境下でアルミを凝固させる差圧鋳造は、アルミ内の水素ガスの放出を抑えるため、気泡の発生を大きく抑制することが可能です。
同社が航空機部品参入に向けて研究開発を加速させた2009年当時の需要予測では、世界の航空機の機体数が、20年後の2029年までに約3万5,000機に倍増すると見込まれていました。また、複雑な形状の鋳物を製造できる業者が世界規模で減少しており、ジェットエンジンメーカーは部品の調達に苦慮していました。
とはいえ、航空機部品の製造には高度な技術や厳格な品質管理が求められ、新規参入企業には高いハードルとなっていました。そこで同社では、ISICOの専門家派遣事業を活用し、航空機部品を手掛けるために必要な国際認証「Nadcap」を取得しました。
当初は、実績のない同社に興味を持ってくれるジェットエンジンメーカーはなかったため、「高精度の試作品を無料かつ短納期で作るから見てほしい」と売り込んだところ、2015年ごろには国内企業から発注が舞い込むようになり、現在では国内外の大手企業7社と取引があります。
ところで、同社の強みの一つに、アルミより軽くて強く、航空機の軽量化を図る素材として注目されるマグネシウム合金を加工できることが挙げられます。マグネシウム合金の発火しやすいという難点を克服するため、5年前から富山大学などと素材の共同研究を行っています。
また、鋳型を精度の高い3Dプリンターで作製することで、航空機エンジンのギヤボックスの試作期間を2カ月半まで短縮。駒井公一社長は「一般的な企業なら1年間かかるところを4分の1の期間で試作品ができる」と胸を張ります。 設備の充実に向けては、ISICOのサポートを受け、ものづくり補助金を活用しました。例えば、2018年に導入した「X線検査システム」は、鋳造品の内部に異物や気泡がないかを調べる装置で、品質保証に役立っています。
「中小企業が利益を上げながら、新規事業を立ち上げるのは難しいが、ISICOの継続的な支援が結果につながった」と話す駒井社長。航空機分野の売り上げは3年以内に全体の30%を占めるまでになると見込み、従業員を25人増員するなど、生産体制を拡充させ、「スピード感を持って事業を進めたい」と意気込んでいます。
企業名 | TANIDA 株式会社(旧:谷田合金株式会社) |
---|---|
創業・設立 | 設立 1962年5月 |
事業内容 | 自動車や航空機のエンジン部品、半導体製造装置のアルミ・マグネシウム鋳物の製造・加工 |
関連URL | 関連URLを開く |
---|---|
備考 | 情報誌「ISICO」vol.106より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.106 |