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ISICOは10月21日、県地場産業振興センターで第2回RPA(※)を活用した業務効率化セミナーを開催し、県内企業の約100人が参加しました。当日は2人の講師が、社内でRPAの活用に取り組み、成果を上げた事例を紹介し、参加者は生産性向上やミス削減、働き方改革につながる新たな技術に理解を深めました。ここでは講演内容をダイジェストで紹介します。
(※)RPA:定型的な事務作業の自動化
木下 修治氏
[(株)横山商会 新規事業創出推進室長]
当社では、社員の健康と仕事の質の向上を目指し、働き方改革に取り組む中で、RPAに着目しました。導入に当たっては、数社の製品を検討した上で、「社内でシナリオ(実行してほしい処理の流れ)を作ることができそう」「あらかじめ用意された開発用ライブラリが充実している」「そこそこの価格」といった点を決め手としてツールを選び、昨年秋から社内業務のRPA化をスタートしました。
手始めに、当時私が所属していた部署で、停滞在庫削減に向けた打ち合わせ用の資料作成をRPA化しました。所要時間が従来の3時間から10分に短縮され、その効果にはびっくりさせられました。
自分の部署のRPA化が一段落した頃、会社全体に広めようとあちこちの部署に声を掛けましたが、現場ではイメージできないようで、しばらくは無反応でした。そこで、遅くまで残業している営業アシスタントにターゲットを定め、残業の原因となっていたエクセルの編集作業を自動化しました。その結果、6時間かかっていた作業が45分で終わるようになり、残業もミスもなくなりました。
その後、RPAに感動した営業アシスタントが周りの人にどんどん便利さを広めてくれたおかげで、社内での普及に加速がつきました。ですからRPA化を推進する際はSNSのインフルエンサーのように、社内で情報発信力のある人にまず体験してもらうのがよいでしょう。また、当社ではRPAに置き換えた作業の流れをパワーポイントで図示し、グループウェア上で公開しています。その結果、各部署からの問い合わせも増えていきました。
当社では、エクセルやCSVファイル(※)に基づくデータ入力業務、ウェブ上の数値やテキスト情報の集計業務、複数のエクセルやCSVを編集する業務、メールの送受信などにRPAを活用しています。具体的には、銀行の振込データと請求データの突き合わせ、社内システムへの入金入力処理、各課からエクセルで提出される予算の取りまとめ、定型文による個人宛てメールの作成などです。
また、毎朝決まったホームページにアクセスして、銅ベース(建値)レートを取得し、価格に変更があれば指定のアドレスにメールを送信する作業もRPAで行っています。毎日の単純作業ですが担当者の不在や失念による連絡漏れを防ぐことができます。これらをまとめると、8月末までの実績で年間726時間の労働時間削減につながっています。シナリオさえ作っておけば、どんなに複雑な作業でも間違うことはありませんから、今後もどんどんRPA化を進めたいと思っています。
社員の中にはRPA化が進むと自分の仕事がなくなってしまうと心配する人もいますから、推進する側は、効率化によって空いた時間に何をするか決めておくと、導入がスムーズに進むと思います。当社では自動化できる仕事はRPAに任せ、人は人にしかできない仕事に専念してもらうようにしています。
(※)CSVファイル:カンマで区切ったテキスト形式のファイル
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | 新産業創出のための総合的支援、産学・産業間のコーディネート機関 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.108 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.108より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.108 |