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【巻頭特集】Case.1 味はもちろん、食の安心安全を追求 国内シェアを高め、海外展開も視野に ~(株)大和

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キラリと光る技術を磨きニッチトップを目指す!

石川県の産業の特徴の一つは特定分野で高い技術力を持ち、全国ナンバーワンのシェアを誇るニッチトップ企業が多いことで、その数は現在約70社に上る。県ではシェアトップや株式上場を目指す企業を支援するため、2005年度に「ニッチトップ企業等育成事業」を創設。採択された企業には助成金が交付され、制度融資の融資限度額が拡大されるほか、県や県工業試験場、ISICOが集中支援を実施している。今回の巻頭特集では今年度と昨年度の採択企業の現在までの取り組みや将来ビジョンを紹介する。​

だしは昆布とかつおから 家庭と同じ調理法で

大和が製造するチルド食品の写真 高齢者施設やシニア世帯向けに調理済みチルド食品を製造、販売する大和。取引先は北海道から九州まで全国に広がり、現在、1日に3万6,000食を供給する。ここ5年間は年率20%を超える勢いで、売り上げを伸ばす急成長ぶりだ。そのため、2019年4月には従来の工場の隣接地に延べ床面積約3,300平方メートルの新工場を竣工し、1日当たりの生産能力をこれまでの3倍となる4万5,000食まで引き上げた。
 同社の業績が好調に推移する要因の一つがおいしさだ。例えば、だしは化学調味料を使わず、昆布とかつおから丁寧に取るほか、みりん風調味料ではなく本みりんを使用、野菜の約70%は国内で調達するなど、味を左右する食材や工程には徹底的にこだわっている。
 「肉じゃがを大量に作るなら、別々に煮たジャガイモやニンジン、タマネギ、豚肉を冷まして混ぜ合わせ、調味用のだしを入れて袋に詰めるやり方が効率的でコストも抑えられます。しかし、これでは食材に味が十分しみこみません。ですから、当社では大きな回転釜を使って、家庭で作るのと同じやり方で作るようにしています」(津田隆太郎社長)。
 無駄な工程を極力省きつつ、おいしい食品を提供するためには手間暇を惜しまない。同社に根付くそんな企業文化が成長の牽引力となっているのだ。

メニューは2,000種類 「医療食」も提供

 また、メニューの豊富さも同社の強みと言える。同業他社が多くても800種類程度なのに対し、大和では約2,000種類のメニューを提供。しかも、月に15品の新メニューを開発する上、既存メニューの中で注文が少ないものなど毎月10品を必ずリニューアルするなど、ラインアップの充実に絶え間なく取り組んでいる。
工場内での製造風景の写真 糖尿病や腎臓病などを患っている人のために、カロリーやタンパク質、塩分を調節した「医療食」を作っていることもメニューが増える理由だ。同社では創業後間もなく、小松市内の事業所に弁当を宅配していた1985年頃から栄養士が献立を作って、栄養価を記載したメニューを配布しており、こうした取り組みが健康に配慮したシニア向け食ビジネスにつながった。
 もちろん、現在も管理栄養士と栄養士を合わせて8人が在籍してレシピ開発を担当するほか、新たなサービスとして、同社の食品を利用する高齢者に日頃の食生活で気をつけてほしい点などについて電話でアドバイスする栄養相談窓口の開設に向け、準備を進めている。

助成金を活用し認証取得やECサイト構築

 津田社長によれば、シニア向け食品市場は2042年まで拡大が続くと見込まれている。その上、一般の冷凍食品やレトルト食品に比べて参入障壁が低いため、数多くのライバルがひしめき合い、最大手でもシェアは20%未満にとどまる。中堅企業として徐々に存在感を増す大和のシェアは現在3~ 4%で、2025年にはこれを10%にまで高める目標を掲げ、2019年には県のニッチトップ企業等育成事業に採択された。
 飽くなきおいしさの追求やメニューの充実などに加え、助成金を活用して同社が取り組むのが日本発の食品安全管理規格「JFS」の認証取得である。JFSには食品衛生管理の国際基準として知られる「HACCP(ハサップ)」の内容も含まれており、工場見学に来られない取引先や利用者に対しても安心安全な生産体制が整っていることをPRし、一層の受注拡大の呼び水とする。
 また、取引先をはじめ、ゆくゆくは一般消費者にも自社ブランドの加工食品を販売するためのECサイトの構築も計画している。

冷凍食品の開発を開始 アジア市場の調査も

 2020年からはISICOのチャレンジファンドの支援を受け、冷凍食品の研究開発にも着手した。チルド食品はあまり日持ちしないため、現在は高齢者施設などへ必要な数だけ毎日発送しているが、長期保存可能な冷凍食品であれば、その頻度を減らすことができるので、人手不足が深刻化している物流業者への負荷を減らすことにつながる。また、施設でストックしてもらえるため、急に入所者が増えた際などにも柔軟に対応できるようになる。大和が働き方改革を進める上でも、ストックしやすい冷凍食品の割合を増やすメリットは大きい。
津田隆太郎社長の写真。 また、冷凍食品の研究開発は将来の海外進出に向けた布石でもある。「市場が拡大基調で会社に体力のあるうちに海外に販路を広げたい。現地工場を立ち上げる手もあるが、メード・イン・ジャパンのブランド力を生かすためには、日本で生産した冷凍食品を輸出して販売する方が商機が大きい」。津田社長はそう展望し、既にジェトロの支援を受け、アジア市場のマーケティング調査にも取り組んでいる。
 シニア世代の健康を日常の食事からサポートするノウハウが、今後高齢化が進む海外でも必要とされることは間違いなく、大和の国境を越えた取り組みにも注目が集まる。

企業情報

企業名 株式会社 大和
創業・設立 設立 1982年10月
事業内容 シニア(施設・個人)向け調理済み食品の製造、販売など

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関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.113
備考 情報誌「ISICO」vol.113より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.113


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