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【巻頭特集】Case.2 写真から素早く3次元データを作成 災害時の復旧工事をよりスピーディーに ~五大開発(株)

印刷ページ表示 更新日:2020年12月22日更新

キラリと光る技術を磨きニッチトップを目指す!

石川県の産業の特徴の一つは特定分野で高い技術力を持ち、全国ナンバーワンのシェアを誇るニッチトップ企業が多いことで、その数は現在約70社に上る。県ではシェアトップや株式上場を目指す企業を支援するため、2005年度に「ニッチトップ企業等育成事業」を創設。採択された企業には助成金が交付され、制度融資の融資限度額が拡大されるほか、県や県工業試験場、ISICOが集中支援を実施している。今回の巻頭特集では今年度と昨年度の採択企業の現在までの取り組みや将来ビジョンを紹介する。​

従来法に比べて人手も時間も大幅削減

「PoiCL」で作成した3次元点群データ画像。

 五大開発がニッチトップ企業等育成事業に採択され取り組むのは、3次元点群作成システム「PoiCL(ポイクル)」のシェア拡大である。
 まずは上にある画像を見てほしい。これはPoiCLで作成した画像だ。一見すると写真のようにも見えるが、これは点群、つまり無数の点の集まりによって構成された画像である。点にはそれぞれ3次元の座標情報が含まれているため、このデータを使えば、パソコン上で点と点の間の距離や角度を測定したり、断面を見たりすることが可能だ。これらの3次元の点群データを、ドローンやデジタルカメラ、スマートフォンなどで撮影したデジタル写真から作成するのがPoiCLである。
 ではPoiCLはどのような場面で重宝するのか。その一つが災害時の復旧工事である。例えば台風や豪雨によって、道路ののり面が崩れ落ちたとしよう。のり面を補修、補強するためには、まず崩落の規模など現場の状況を把握することが不可欠だ。こうした事前調査では通常、人が現場に入って測量した情報をCADに入力して図面データを作成する。一方、PoiCLを使えば、現場で撮影した写真のデータをシステムに取り込むだけで同様のデータができあがるため、必要となる人手も時間も大幅に削減できる。「規模が分かればコストも計算できる。施主にとってはこれが重要」と話すのは服部克典営業部長だ。
 このほか、建築物や土木構造物を設計する際の事前調査に役立つほか、設計者と施主が打ち合わせる際、平面図を使うよりも現場のイメージを視覚的、立体的に共有しやすくなるなど、さまざまな場面で活用が見込まれている。

誰でも簡単に使えるよう機能を絞り込む

 2次元のデジタル写真から3次元の座標情報を持った点群データを作成するために使われているのが、SfM(Structure from Motion)と呼ばれる技術である。SfMは対象物を複数の視点から撮影し、画像処理と空中三角測量の手法を用いて3次元の座標を解析する手法だ。わずかにアングルを変えて撮影した2枚の写真を、左右の目で別々に見ると被写体が立体感をもって浮かび上がる「ステレオ写真(立体写真)」を試した経験のある人も多いだろう。SfMもこのステレオ写真と同様の原理を利用して、2次元のデジタル写真には含まれていない奥行きの情報を得ているのだ。
石川智英常務、服部克典営業部長、関家史郎営業副部長の写真 SfMを用いた3次元点群作成システムはほかにもある。これらのシステムはPoiCLに比べれば高精度・多機能だ。しかし、その分、多くのデジタル写真が必要で、データ作成にも時間がかかる上、使いこなすのが難しく価格も高額である。その点、PoiCLは現場全体をざっくりとスピーディーに把握するという機能だけに特化して価格を抑え、使いやすさを追求。関家史郎営業副部長は「デジタル写真さえ、ちゃんと撮れていれば、導入初日から使いこなすことができる」と胸を張る。

10年越しの挑戦 三度目の正直で完成

 そもそも同社がPoiCLの開発に取り組み始めたのは10年以上前にさかのぼる。災害時に一刻も早く現場の規模を把握したい。そんなニーズに応えるため開発に着手したものの、カメラのセンサーサイズや焦点距離など3次元の座標を求めるために必要な情報が公開されていなかった上、コア技術となるSfMにも手を焼き、開発は二度にわたって頓挫した。
 三度目の正直でPoiCLの開発が成功したポイントは二つある。一つはデジタルカメラの普及に伴い、センサーサイズなどの情報が公開され、容易に入手できるようになったことだ。もう一つのハードルであるSfMについても、一般に公開され誰でも無償で活用できるオープンソースシステムを利用して解決につなげた。
 開発にあたっては地形解析で豊富なノウハウを持つ砂防エンジニアリング(埼玉県)、測量学を専門とする第一工業大学(鹿児島県)の田中龍児教授からも協力を得た。

外部の知見生かし販促活動を加速

 2019年8月の発売後は建設土木会社を中心に営業活動を展開し、200本販売すればヒットと言われる中、現在までに168本を売り上げ順調なスタートダッシュを切った。
 2020年10月からは県のニッチトップ企業等育成事業の後押しを受け、販路拡大を一層加速させる。「いい製品を作るだけでなく、いかにPRするかが課題。(県や県工業試験場、ISICOで構成する) 支援チームから知恵やノウハウ、情報をいただきながら、拡販に努めたい」。そう意気込むのは五大開発でプロジェクトを統括する石川智英常務だ。今後は補助金も活用しながら、製品パンフレットを改訂し、地盤工学会や地滑り学会、土木学会で催される展示会に出展するほか、ユーザーのニーズを取り入れ、システムのバージョンアップにも取り組む。
「PoiCL」などの開発に取り組む五大開発の開発室の風景写真 同社は建設コンサルタントでありながら、業務に必要なソフトを開発、販売するという全国的にも極めて珍しい会社だ。特に斜面防災に関するソフトで強みを発揮し、これまでも斜面に鉄筋などの補強材を挿入して得られる安定性や概算工事費を計算する「補強土」など、いくつものトップシェア製品を生み出してきた。地球温暖化によって自然災害が多発し、建設業界の人手不足が深刻化する中、PoiCLのニーズはますます高まると予想され、これらに続くニッチトップ製品として成長することを期待したい。

企業情報

企業名 五大開発 株式会社
創業・設立 設立 1965年3月
事業内容 建設コンサルティング、ソフトウェア開発・ITコンサルティング

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関連URL 情報誌ISICO vol.113
備考 情報誌「ISICO」vol.113より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.113


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