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漆だけで造形する独自の技法を開発 劣化や変形抑え、海外でも販路拡大へ ~山崖松花堂

印刷用ページを表示する更新日:2021年2月15日更新

チャンスをつかみ、未来をひらく
Seize a chance and open a bright future.​

山崖松花堂の17代目となる山崖宗陽さんと松堂さんの写真 

老舗塗師屋(ぬしや)の山崖松花堂では、木や布などを一切使わず、芯から表面までをすべて国産漆で作る「芯漆(しんしつ)」という技法を独自に確立した。従来の漆器に比べ、経年劣化が少なく半永久的に漆本来の美しさを保つことができる点が特長で、温度や湿度の変化にも強い。ISICOの活性化ファンド事業の後押しを受け、日本語版と英語版のホームページを作成したほか、ニューヨークにあるギャラリーでの展示会も計画するなど、海外市場を見据えた販促活動を本格化させている。​

450回塗り重ね、完成まで23年

 漆器は通常、椀の形に成型した木地などの表面に漆を何度も塗り重ねて製作される。一方、木地などを使わずに漆だけで作り上げるのが、山崖松花堂が開発した「芯漆」である。
 木地などを芯に用いないのであれば、一体何に漆を塗るのか。初めて芯漆を目にして、「空気に漆を塗っているのですか」と質問を投げかける人も少なくないそうだが、もちろんそうではない。発泡ウレタンや粘土で作った型の表面に漆を塗り重ねて徐々に厚くし、その後、内側にある型を取り除いて、さらに漆を塗り重ねたり、きれいに磨き上げたりして仕上げていくのだ。
 一般的な漆器が漆を塗っては乾かす工程を10回程度繰り返すのに対し、芯漆では少なくても50回、多ければ450回以上も塗り重ねる。そのため、製作期間は短くても8年を要し、完成までに23年かかったものもあるという。水滴で石をうがつような根気のいる仕事だ。

琥珀(こはく)のように1億年後も美しく

山崖松堂さんの制作風景写真。微妙な表情を出すため、はけを使わず手で漆を塗る。 木地を補強するために漆を塗るのではなく、漆だけで造形する芯漆の技法を確立したのは、主に仏像や香合などを製作する兄の山崖宗陽さんと、主にぐい呑みや抹茶わんを製作する弟の山崖松堂さんである。二人が芯漆を研究し始めたのは1990年代にさかのぼる。
 「いくら手間をかけて作っても時間が経てば漆器は割れたり、はがれたりして修理が必要になる。このことに疑問を感じたのが芯漆を手がけるきっかけでした」。そう話すのは宗陽さんだ。漆は樹脂の化石である琥珀と同じく、化学的に安定した構造を持ち、酸やアルカリ、熱に強い。それならば劣化を避けられない木地を使わずに漆だけで作れば、琥珀のように1億年後も美しさを保てるのではと開発に乗り出した。
 使っているのは、代々買いためてきた国産漆だ。「漆器には傷つきやすいイメージがあるが、それは中国産の漆を使っているから。国産漆を使った私の抹茶わんは茶筅(ちゃせん)を使っても傷一つ付かない」と松堂さんは説明する。
 誰もやったことのない技法だけに開発は困難の連続だったが、二人は日本に連綿と受け継がれてきた漆の文化を途絶えさせず、後世に残したいという思いを原動力に試行錯誤し、ノウハウを蓄積。化学変化によって、何層にも塗り重ねられた漆が年を追うごとに透明感を増し、光を複雑に反射させるため見る角度によって色合いが変わる独自の作品にたどり着いた。

ニューヨークでの販売に手応え

 「誰にもまねのできないものづくりができるようになった」。そう胸を張る二人にとって、課題となっているのが情報発信や販路開拓である。
 認知度はまだまだ低く、これはという店に飛び込みで作品を持ち込むなどして、取引につなげてきた。例えばその一つ、東京・銀座で現代陶芸と美術品を販売する黒田陶苑では12、3年前に取り扱いが始まり、毎年展示会も開催するなど、年々売り上げが伸びる有力な販路となっている。
 2017年度からはISICOの活性化ファンド事業に採択され、海外への販路開拓にも取り組んでいる。一般的な漆器の場合、日本と異なる気候の海外では木地がゆがんだり、そのせいで漆がはがれ落ちたりすることもあったが、芯漆ならばそんな心配は無用だ。
山崖宗陽さんが製作した「阿修羅像」と「きじ香合」の写真 また、宗陽さんは「作家やアーティストの知名度が人気を左右する日本と違い、海外にはいい作品であれば、無名でも認めてくれる素地がある。それに外国人は後世に残るものは資産として考え、購入してくれる。塗り物は経年劣化するので、資産価値が低く見られていたが、芯漆ならば高く評価してもらえるのではと考えた」と話す。
 折しも、黒田陶苑で芯漆のぐい呑みを買い求めた日本料理店の店主の紹介で、日本人アーティストや職人のアート作品、工芸品を販売する一穂堂(いっぽどう)(東京・銀座)がニューヨークで運営するギャラリーで芯漆が展示され、何点か売れたことも二人の背中を押した。

ホームページが購入や取材のきっかけに

山崖松堂さんの手によるぐい飲み「超新星」と「銀河」の写真。 助成金を活用し、山崖松花堂ではまず2019年に芯漆について詳しく紹介するホームページの日本語版を作成した。続いて2020年の初めには英語版も整備し、「芯漆」を商標登録した。
 ホームページを開設した効果はてきめんで、国内はもちろん海外からも問い合わせが入るようになった。また、ホームページをきっかけに共同通信社の取材を受け、記事が全国各地の地方紙に掲載された。金沢や首都圏から購入のために輪島まで足を運んでくれる人もいた。
 2020年の春にはニューヨークの一穂堂ギャラリーで展示会を催し、山崖兄弟も現地入りして直接PRする予定で作品を搬送したが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、あえなく延期となった。
 それでも二人は今後、芯漆を販売するためのECサイトの開設を視野に入れるほか、増えてきた訪問客に対応するため展示室として土蔵の改修を検討するなど、情報発信や販路開拓にますます意欲を燃やす。
 「いい出会いがあれば、ヨーロッパや中国でも販売したい」。海外展開に向けても積極的な姿勢を見せる二人の目は生き生きと輝いていた。

企業情報

企業名 山崖松花堂
創業・設立 創業 1800年
事業内容 漆器の製造販売

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.114
備考 情報誌「ISICO」vol.114より抜粋
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掲載号 vol.114

 


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