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サポイン事業を活用し、産学官の英知を結集 サーボプレスによる超高精度鍛造成形法を開発 ~かがつう(株)

印刷ページ表示 更新日:2021年3月10日更新

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金沢市で創業し、現在も県内3カ所に営業・生産拠点を構えるかがつう(本社/東京都中央区)では昨年12月、自動ブレーキや自動駐車などドライバーをサポートする機能を備えた車に搭載される超音波センサーを格納するケース(以下、センサーケース)の量産を開始した。これに先駆け同社では、2018年度から2年半、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」に採択され、ISICOや県工業試験場、金沢大学と連携し、加工技術の高度化に取り組んだ。​​

センサーを格納するケース 月産5万個を製造

センサーケースと加工前の原材料の写真。

 かがつうが量産を始めたのは、直径約14ミリ、高さ約10ミリの円筒形のアルミ製センサーケースである。内部には周囲の車や障害物を検知するための超音波センサーの心臓部である圧電素子が格納される。
 圧電素子は非常に微少な振動を効率よく伝達する役割がある。そのため、センサーケースには超高精度な仕上がりが求められ、中でも底部は最も高精度が要求される。
 同社では、サポイン事業を通じて導入したサーボプレスを用い、AI(人工知能)を活用して見いだした最適な加工条件により、超高精度な鍛造成型を可能とし、顧客のニーズを満たす精度と量産性を両立させた。
 昨年12月からは月産5万個を生産し、今後もドライバー支援機能を備えた車の普及や自動運転技術の進展を背景に、需要の増加を見込んでいる。

金型を動かすスピードなど、自在に電子制御

 では同社では、どのように研究開発を進めていったのか、その歩みを振り返ってみたい。
金属部品を超高精度に仕上げるには、通常、切削加工が最適とされる。しかし、切削加工はセンサーケースで言えば、加工速度は毎分5個で生産性が悪い。そのため自動車部品のように大量生産が必要なものを作るには非効率である。加工する際、切りくずが大量に発生するため、材料のロスが多いという難点もあった。
 そこでセンサーケースを受注した同社が、約5年前にまず取り組んだのがクランクプレス機による鍛造成型だった。加工精度は切削加工にわずかに及ばないが、これにより加工速度は毎分16個にまで向上した。
サポイン事業の助成金で購入したサーボプレスの写真。 しかし、新たに必要とされた次世代の超音波センサーを格納するセンサーケースでは、さらに測定距離を伸ばすため切削加工を超える精度が求められた。同時に、今後の普及を見据え、一層の生産性アップも課題となった。
 こうした課題をクリアするため、同社が白羽の矢を立てたのがサーボプレスだった。サーボプレスはサーボモーターによって、スライド(上側の金型)を動かすスピードや位置、荷重を自在に電子制御できるのが特長で、他のプレス機に比べ、精度に優れた製品を生産することが可能になる。

最適な加工条件をAIが導き出す

 とはいえ、たとえサーボプレスといえども適切に制御できなければ目標は達成できない。同社では従来、3台のサーボプレスを導入していたが、その制御は試行錯誤の連続だった。そこで県工業試験場機械金属部に相談を持ちかけ、機械学習や最適設計を専門とする金沢大学設計製造技術研究所の北山哲士教授につないでもらった。
 サポイン事業の活用に向け、背中を押したのはISICOである。かがつうでは、以前から新たな研究開発に取り組む際、ISICOの支援メニューを活用した実績があった。今回は相談を受けたISICOスタッフがサポイン事業にふさわしいと判断し、申請を勧めサポートした。
サポイン事業の助成金で購入した画像検査機の写真。 事業に採択されてからは、同社がトライした数百の実験データを金沢大学に提供した。そして機械学習を活用した最適設計法を用いて効率的に精度よく加工できる条件を見いだし、その結果をコンピュータ上でのシミュレーションや実際のサーボプレスを使って検証した。
 また、クランクプレス機では鍛造時にセンサーケースの表面にできるひびやしわをなくすため、加工前後に研磨処理が必要だった。この工程をなくすことができれば、さらに生産性が上がるため、県工業試験場と共同で、鍛造時に使う潤滑剤についても研究を進め、ひびやしわを極力抑えられるものを選定した。その結果、研磨処理が大幅に簡略化され、歩留まりも良くなった。
 アドバイザーとして事業に参画し、冷間鍛造について豊富なノウハウを有するケイ&ケイ(石川県)や川下企業からの助言も研究開発の推進力となった。

他の市場にも技術の応用展開目指す

 2年半に及ぶ研究開発の末、サーボプレスによる革新的超高精度鍛造成形法が確立された。加工精度は1000分の1ミリ台の公差をクリアし、切削加工を上回った。加工速度も毎分40個と大幅にスピードアップした。
 「ここまで踏み込んで産官学で研究開発に取り組んだのは初めて。サポイン事業の後押しを受けたからこそやりとげることができた」と話すのは野崎信春社長だ。藤井和正WP副本部長も「(AIなどに関して)聞いたことがない用語もあり苦労した」と苦笑しながら達成感をにじませる。
野崎信治社長と藤井和正WP副本部長の写真。 かがつうでは既に顧客からの依頼を受け、量産をスタート。超音波センサーの世界市場は年間3億ユニットと推計され、今後の技術の進化によりさらに成長が見込まれている。
 「センサーケースだけでなく、ほかにも今回開発した技術を生かせる市場がある」。野崎社長はそう話し、今後、技術の応用展開を視野に入れ、顧客に対して積極的に提案する方針だ。

企業情報

企業名 かがつう 株式会社
創業・設立 設立 1946年8月
事業内容 情報通信機器、照明器具、精密電子部品の製造など

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.115
備考 情報誌「ISICO」vol.115より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.115


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