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新型コロナウイルスの感染再拡大によって、地域経済に急ブレーキがかかりました。これによって再び厳しい状況に置かれた事業者や反転攻勢を目指して意欲的にチャレンジする事業者をサポートするため、県やISICOではさまざまな支援メニューをそろえています。
支援策の詳細などについて、当財団の理事長である谷本正憲知事に聞きました。※6月末現在の内容です。
変異株の影響により、石川県では4月の感染者数が3月の約10倍、さらに5月は、その約2倍と急増し、この2カ月間の感染者数は、今年3月までの1年余りの全感染者数に匹敵する規模となった。こうした異常な事態を受け、5月9日には、昨年以来2回目となる県独自の「石川緊急事態宣言」を発出、5月16日からは国の「まん延防止等重点措置」が適用された。接触を徹底的に回避するため、県民や事業者の皆さんには、不要不急の外出自粛や飲食店の営業時間短縮など、大変厳しい対応をお願いした。
ほとんどの飲食店に時短要請に応じていただくなど、県民や事業者の皆さんのご協力が感染の落ち着きにつながり、6月13日をもって「まん延防止等重点措置」が解除され、合わせて「石川緊急事態宣言」を解除した。これに伴い、飲食店等への時短要請などを終了した。
とはいえ、決してコロナ前の元の日常に戻ったわけではない。県民や事業者の皆さんには、今後も新しい生活様式の実践など感染防止対策を徹底していただきたい。
昨年度は、これまでにない有利な条件の緊急特別融資を創設し、運転資金として、2,000億円を超えるご利用をいただいたほか、全国トップクラスの総額180億円もの資金支援により、事業継続を下支えしてきた。
一方で、事業者からは「将来を見据え、事業活動に前向きに取り組みたい」という声も数多く寄せられた。こうしたことを踏まえ、当初予算では、緊急的な一律給付から、企業の状況に応じたきめ細かな支援へと軸足を移し、一日も早く企業が本格的な回復軌道に乗り、成長できるよう「コロナに打ち克つ経営力強化総合支援プログラム」として、リーマンショック時の3倍を超える総額30億円の事業規模で総合経済対策を講じた。
専門家によるアドバイスを通じて、新商品・新サービスの開発、あるいは業態転換から販路の開拓までを一貫して支援する。
具体的には、まず、専門家派遣制度を充実させた。ISICOを中心とした専門家は、例えば活性化ファンド、現在の中小企業チャレンジファンドで助言指導を行い、これまで、採択企業約700社のうち約9割が商品化を達成するなど、国からも高く評価されている。
今回は、これまでに設けた複数の専門家派遣制度を一本化した上で、1企業あたりの派遣回数や人数の上限を撤廃したほか、費用も自己負担なしとするなど、他県には例のない手厚いサポート体制を構築した。既に派遣回数は700回を超え、出足は好調だ。派遣枠は5,000回を用意しており、企業の経営課題にきめ細かく対応していく。
昨年度行った、飲食店のテイクアウト販売や小売店のネット販売など、新分野への進出に対する支援については、5,000件以上を採択し、多くの成功事例が生まれた。今回は支援の上限額を
50万円から100万円へと引き上げるなど内容を充実させ、引き続き事業者の前向きな取り組みをしっかりと支援する。
販路開拓については、オンラインも含めた展示会等への出展に対し、リーマンショック時の1.5倍、過去最大となる200件分の支援枠を設け、1件でも多くの受注獲得につながるよう支援する。
この4月、5月の急激な感染拡大は、当初の想定を大きく超える事態となり、昨年度のような緊急的な支援を必要とする事業者もいる。
こうしたことから、既に5月末までに、異例とも言える3度の補正予算を編成した。飲食店等の皆さんに対する総額132億円もの時短要請協力金を措置し、速やかな支給に努めている。さらに、当初予算編成後の大きな状況の変化に速やかに対応し、当初予算で講じた対策につなげていくため、昨年度に続き、6月補正予算を編成した。
まず、緊急的な措置として「石川県経営持続月次支援金」を創設した。具体的には、国の月次支援金の半額を県独自に上乗せして支援する。特に金沢市内では、国から酒類提供自粛が強く要請されたため、その影響を大きく受けた酒類販売業者には、さらに上乗せして国の月次支援金と同額を支援する。そして、事業者に迅速に資金が届けられるよう、国の月次支援金の決定通知書をもって確認審査を行うなど、手続きを大幅に簡素化した。事業者の皆さんには、事業継続の一助としてお役立ていただきたい。
特に、飲食業や観光関連産業は相当大きなダメージを負っており、こうした産業の再生に力を入れなければならない。とはいえ、経済再生に力を入れすぎると感染防止対策が疎かになり、感染防止に力を入れると経済に悪影響が出る。そのため、感染防止対策と経済活動を両立する方法が必要だ。
その有力な手立てがワクチン接種である。最大の感染防止対策であり、ひいては経済再生にもつながる、まさに新型コロナ対策の出口戦略の要である。
県では、金沢大学や金沢医科大学、県の歯科医師会や看護協会、薬剤師会などの協力を得て「いしかわ県民ワクチン接種センター」を設置し、7月4日から本格的に接種を開始した。インフルエンザが本格的に流行する11月末までに、希望者全員が接種できるよう、市町をしっかりサポートしていく。社会全体で新型コロナウイルスへの免疫力を強化し、経済再生の足がかりにしていきたい。
感染拡大の防止をしっかりと図りつつ、需要喚起策を講じなければならない。
そこで、まず県では国の方針に沿って、事業者が、基準に基づいて適切に感染防止対策を講じていることを県が認証する「いしかわ新型コロナ対策認証制度」を創設した。この制度では、国が求める飲食店だけではなく、県独自に、観光立県として安全・安心が求められる宿泊施設も対象とした。
認証店では、利用者が一目で分かるよう店頭に認証ステッカーを貼り、店内にも認証書と日々の取組内容を記載したチェックリストを掲示していただく。また、万一、チェックリストに沿った感染対策が講じられていない場合には、利用者から県に連絡できる仕組みとしている。
このいしかわ版第三者認証制度を広げていくことも社会全体の感染防止対策の強化になり、経済再生につながると考えている。昨年8月に始まった、感染防止対策を徹底していることを、事業者が自主的に宣言する「新型コロナ対策取組宣言」には約4,000もの飲食店や宿泊施設が参加している。宣言店舗をはじめ、多くの事業者に認証を取得していただきたい。
感染状況が落ち着いていることを前提に、認証店を対象に需要喚起を図るインセンティブを二つ設けた。
一つは認証を受けた飲食店で利用できる「いしかわGoToイートプレミアム」食事券の発行である。プレミアム率は、国の制度に県独自の上乗せを行い、好評だった第1弾と同率の25%に引き上げるとともに、80万冊を発行し、全国トップクラスとなる総額100億円の需要を喚起する。
もう一つは「県民向け県内旅行応援事業」である。昨年、旅行代金総額で約40億円、宿泊者数は延べ約15万人を数えるなど大変好評だった県民割の第3弾で、認証を受けた旅館やホテルなどを利用する場合、旅行代金に応じて、5,000円、3,000円、2,000円の3区分で割り引く。
また、今回は日帰り旅行も対象とし、バス等の交通事業者や幅広い観光関連産業にも経済効果を波及させるため、土産物店や飲食店、公共交通機関等で利用できる県独自の観光クーポン券を新たに発行する。さらに、第2弾の際に設けていた利用回数制限を撤廃した。これらにより総額で70億円の需要が喚起されると見込んでいる。
このように、認証制度を設け、飲食店と宿泊施設の認証店舗を対象とした総額170億円の需要喚起策を実施することで、認証店舗の増加につなげ、感染拡大の防止と需要の喚起の両立を図る。
繰り返しになるが、落ち着いた感染状況が大前提であり、県民の皆さんには、新しい生活様式の実践など感染防止対策の徹底をお願いしたい。
新型コロナウイルスとの闘いは一進一退だが、今こそ、経験豊富なスタッフがこれまで培ってきた知識や経験を総動員して、事業者の皆さんが抱える経営課題に、利用者目線できめ細かくサポートしていきたい。それこそがまさにISICOの真骨頂とも言える。業績の回復とその先の成長に向けた、企業の皆さんの前向きな取り組みを全力で支援していくので、お気軽にご相談いただきたい。
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | 新産業創出のための総合的支援、産学・産業間のコーディネート機関 |
関連URL | 関連URLを開く |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.117より抜粋 |
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掲載号 | vol.117 |