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果物の卸売りやギフト販売を手がけるフルーツむらはたの「テイクアウトパフェ」が昨年4月の発売以降、人気を集めている。石川県が東京・銀座に開設しているアンテナショップ「いしかわ百万石物語・江戸本店」でのテスト販売も評判がよく、県内だけでなく東京での事業拡大も視野に入れている。
「私たちが作っているのはフルーツ屋のパフェ。主役である果物のおいしさを心ゆくまで味わってほしい」。村端一男社長がそう話すように、フルーツむらはたのテイクアウトパフェは、プロの目で厳選した果物をたっぷりと使用しているのが特徴だ。透明のカップにはホイップクリームやババロア、フルーツソース、スポンジケーキなどが何層にも重なり、食べ進むうちにさまざまな味が楽しめる。
ラインアップは季節に応じて変わり、イチゴやブルーベリー、ゴールドキウイなど、これまでに発売されたパフェは約40種類にも上る。自社の4店舗で販売するほか、今年8月には香林坊大和地下1階にパフェとフルーツサンドのテイクアウト専門店をオープンした。
イベント会場などに出向いてパフェを販売する「パフェカー」も稼働させており、引きも切らない出店オファーに応えるため、2号車の整備も計画中だ。
テイクアウトパフェは多い日には1,500個を販売する人気ぶりで、今や同社の売り上げの10%を占める。開発のきっかけとなったのは、新型コロナの感染拡大だ。
「昨年4月、当社ではひがし茶屋街店のオープンを予定していましたが、県から緊急事態宣言が出され、いったん見合わせました。この店で企画していたのが、観光客にその場で手軽に食べていただけるパフェでした。そこで、これをベースに、地元の方が自宅に持ち帰って食べてもらえるよう、ソフトクリームの代わりにババロアを使うなどしてリモデルしたのがテイクアウトパフェです。非常事態でしたから、考えるより行動をと思いトライしました」(村端社長)。
発売するとSNS等で評判が広まり、たちまち人気に火がついた。コロナ禍が思った以上に長引くと、村端社長はテイクアウトパフェが継続的なビジネスになると考え、ババロアの充てん機を導入し、冷蔵庫を増設するなど設備投資に踏み切った。
持ち帰り需要が急増すると、普段は本店パーラーで働くスタッフがパフェの製造をフォロー。知り合いの休業中の会社が社員を出向させてくれたことも増産の助けになった。「新事業がコロナ禍で経営の支えになった。何よりこれによって雇用を維持できたのがよかった」と村端社長は振り返る。
テイクアウトパフェの販路は東京にも拡大している。取っ掛かりとなったのはISICOが石川県のアンテナショップ「いしかわ百万石物語・江戸本店」で実施しているテストマーケティング事業への参加だった。同社では「パフェの日」である今年6月28日と29日に出店し、合わせて240個のパフェを完売した。
輸送には北陸新幹線を活用した。新幹線の魅力は午前の便に載せたパフェが午後には店頭に並ぶスピード感である。また、輸送時の振動が少なく、きれいに盛り付けたパフェの形を崩すことなく運べる点も大きなメリットだった。
「パフェの販路拡大だけでなく、コロナ禍で乗客が減少した北陸新幹線の活性化につながればと思い参加しました。輸送コストはそれほど高くないですし、他の洋菓子店さんにもぜひ活用してほしいと思いました」(村端社長)。
その後、同社では8月16日から29日にはJR東京駅構内の商業施設「エキュート」でも北陸新幹線で毎日輸送したパフェを販売。1日平均200個を売り上げた。
エキュートでの販売は、アンテナショップでのテストマーケティングの結果を高く評価したJALUX(東京)がフルーツむらはたに要請し、実現した。両社は従来から首都圏の百貨店でのギフト販売などで取引があり、これを機に連携をさらに強くしている。9月から12月にかけては、東京都立川市の百貨店「グランデュオ立川」でも各月1、2週間ずつ販売することが決定している。村端社長は今後もJALUXのネットワークを活用しながら、東京での販路拡大を目指す考えだ。
また、自社ですべてを製造、販売するのではなく、委託製造やフランチャイズ方式による事業拡大も検討中だ。もちろんその場合も、要となるフルーツは同社が見極め、供給する。
「フルーツをおいしく、楽しく食べてもらうためにパフェ事業をもっと伸ばしていきたい」と話す村端社長。金沢発のパフェの飛躍に期待が高まる。
企業名 | 株式会社 フルーツむらはた |
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創業・設立 | 創業 1914年4月 |
事業内容 | 法人用フルーツギフトの販売、業務用フルーツの卸売、特選フルーツ・フルーツ加工品の販売、フルーツパーラーの運営、洋菓子の製造販売 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.118 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.118より抜粋 |
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掲載号 | vol.118 |