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使い捨ての食品用ラップの代替品として、ナチュラル志向の消費者から注目を集める「みつろうラップ」。2年前からこのラップを製造してきたロゼッタワークスでは、ニーズの急増を踏まえ、機械化を進めるなど生産体制を強化している。
みつろうラップは、ミツバチの巣の成分である蜜蝋(みつろう)に植物油と松やにを加え、綿布に塗り込んだものだ。器にかぶせたり、使いかけの野菜を包んだりと食品を保存するために使用する。
プラスチック製のラップと違い、優しく水洗いすれば繰り返し使える。天然素材だけで作られているため、使い終わった後は生物分解されて土に返る。蜜蝋などの抗菌・防腐作用が食品のおいしさを長持ちさせてくれるのも特長の一つだ。
ロゼッタワークスでは、和風やポップな柄のみつろうラップを2019年から製造する。これまでは、オーガニック食品の愛好者や環境問題に関心の高い消費者らを中心に販売してきたが、同社でみつろうラップ事業を率いる山本侑季さんは、ここにきて「変曲点を迎えている」と話す。というのも、昨年秋、ISICOの支援を受けて国際見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー」に出展した際、数多くのバイヤーらが興味を示し、千枚単位の大口の問い合わせが急増したからである。
商機を逃さないため、同社では大阪の工場と連携し、国内初となる製造工程の機械化に取り組み、今年4月の本格稼働を予定する。これにより、ハンドメイドで千枚が限度だった月間生産量を10万枚に引き上げる。
みつろうラップはそもそも海外発祥だ。サステナブルな社会の実現に向け、世界中で脱プラスチックの動きが加速する中、山本さんがテレビの紀行番組で知ったのをきっかけに今後需要が伸びると考え、商品化に踏み切った。
最も苦労したのは、松やにの臭いの処理だ。松やにはみつろうラップをしなやかに保つため不可欠だが、独特の臭いがある。海外製は臭いが強く、食品を包む際、抵抗を感じるほどだった。そこで同社では、北陸先端科学技術大学院大学の学生と共同で特殊製法を開発し、松やにの臭いの除去に成功した。
また、輸送時の環境負荷を考慮し、材料は国産にこだわった。海外製で用いられているホホバ油やココナッツ油の代わりにユズ油や米ぬか油を使っているのもそのためだ。将来的には同社が拠点を構える能美市特産の「国造(こくぞう)ゆず」の種から採った油の使用も視野に入れる。
当初は資源を有効活用する観点から和服のはぎれをみつろうラップに仕立て、メルカリで販売した。売れ行きに手応えを感じた山本さんが次に取り組んだのが、みつろうラップを手作りできるキットの商品化だ。開発にはISICOのチャレンジファンドの助成金を活用した。
「もともとは加賀友禅のはぎれを使うつもりでした。しかし、調べてみると加賀友禅でははぎれがそれほど出ないことが分かりました。一方で加賀友禅の中でも型を使って染める“板場友禅”が苦境に陥っていると知り、力になれればと型で描いた友禅柄に自分で色を付ける手作りキットを企画しました」(山本さん)。
キットでは糸目糊(いとめのり)を洗い流す「友禅流し」の工程も体験可能だ。自社のネットショップで販売するほか、自宅で楽しめる体験キットをサプライズで届けるサービス「おうちハック」に採用され、全国の利用者から好評を得ている。
この2年間、国内市場は数々のメーカーが参入と撤退を繰り返している状況だ。そんな中で草分け的な存在として成長を続ける同社がさらに飛躍するために欠かせないのが認知度の向上とリピーターの確保である。
こうした課題に手を打つため、同社では昨秋、新たに専任者を採用し、マーケティング活動を強化している。自然食品店やJAの直売所などへと販路を広げたのも成果の一つだ。
また、熱に弱く電子レンジで使えないという弱点も普及のハードルとなっており、克服に向け研究開発を続けている。
「ラップは日常よく使うものですし、天然素材の代替品はみつろうラップしかありません。弊社が牽引役となり多くの人に知ってもらい、環境保全につなげると同時に、国内でシェアナンバーワンを達成し、海外にも進出したいですね」と話す山本さん。同社のこれからの快進撃に期待したい。
企業名 | ロゼッタワークス 株式会社 |
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創業・設立 | 設立 2013年5月 |
事業内容 | 繊維製品、ヘルスケア関連製品の製造・販売など |
関連URL | 情報誌ISICO vol.121 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.121より抜粋 |
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掲載号 | vol.121 |