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中小企業にとって採用活動の強い味方と言えるのが、無料で利用できるハローワークだ。とはいえ、「求人票を出しても、なかなか応募がなくて」と悩んでいる採用担当者も多いだろう。そこでISICOでは昨年と今年、「求人票作成講座(全4回)」を開催し、ハローワークをフル活用するためのノウハウを伝授した。ここでは受講後に採用に成功した県内2社の取り組みと人材アドバイザーからのメッセージを紹介する。
木村精工は産業機械や搬送装置に使われる部品の精密機械加工を手がけている。最少1個からという小ロット生産に短納期で対応するほか、確かな技術に裏打ちされた精度の良さも強みで、ミクロン単位で測定できる3次元測定機を導入し、品質管理に役立てている。
そんな同社もISICOの支援を受けて、採用につなげた一社だ。
「よく言えば適正、悪く言えばギリギリの人数で仕事していますから、退職者が出ると業務に支障を来すことがありました。もちろん退職の期日を見据え、採用活動に取り組むわけですが、タイミングよく応募者がいるとは限りません。ハローワークでの求人に加え、人材紹介会社に依頼したこともあったのですが、思ったように採用できませんでした」。
そう話す同社の木村吉孝専務は2020年にISICOに相談し、人材アドバイザーから助言を受け始めた。折しも、求人票に掲載できる情報量が増えたほか、オンラインで求人の申し込みや内容の書き換えができるようになるなど、ハローワークのインターネットサービスがより便利になったこともあり、木村専務は早速、求人票の見直しに取りかかった。
求人票の見直しにあたって木村専務が意識したのが求職者目線だ。
例えば、従来は「機械オペレーター」とだけ記載していた職種欄には「#NC旋盤エンジニア#製造業#金沢市#正社員#経験者採用」といった具合に、詳細な情報を記載した。さらに、仕事の内容の欄には工場で使っている機械のメーカー名や仕様、加工する素材なども書き込んだ。
「一口にNC旋盤と言ってもメーカーが違えば操作が異なる場合もあります。材料によっては特別な加工ノウハウが必要になることもある。求人票に情報がなければ、求職者にとっては自分がこれまで培ってきた経験が役に立つのか分かりませんので、そんな不安や疑問を払拭できるよう、なるべくたくさんの情報を提供するよう心がけました」(木村専務)。
採用ターゲットをイメージして作成したこともポイントの一つだ。「引っ越し費用を補助します」「物件探しを手伝います」といった文言は、UIJターンを検討している求職者を意識したものだ。
さらに、エアコンを完備した工場での勤務や時短勤務が可能といった求職者にとってのメリット、「若手社員の技術教育をお願いしたい」などの期待も盛り込んだ。
こうした改善の結果、ハローワークからの応募がコンスタントに来るようになった。今年7月には短時間正社員として子育て中の女性を採用した。
同社ではハローワーク以外でも求人票を活用して会社をPRしている。その成果として、今年4月、ポリテクセンター石川を修了した男性2人を採用した。
同センターでは求職者向けに機械加工などの職業訓練を実施している。企業は、同センターが提供する受講者情報を確認し、これはと思った人材に「求人リクエスト用紙」を送り、採用選考への応募を呼び掛けることができる。
リクエスト時には求人票の添付が必須だ。木村専務は求人票を提出するだけでなく、同センターに足を運んでその内容をさらに詳しく説明したほか、まず先生を工場見学に誘い、職場環境を確認してもらった。後日、同社がリクエストしていた8人の受講生全員が工場見学に訪れた。見学時は受講者と年齢の近い社員を案内役とし、コミュニケーションを取りやすい環境づくりを心がけた。
「過去にはリクエストを送っても誰も見学にさえ来てくれないことがありました。しかし、今回は8人のうち5人が採用選考に応募してくれました。充実した求人票をきっかけに工場を見学してもらい、まず先生に応募に値する会社だと安心感を感じてもらったことが、好結果につながったのではないでしょうか」と木村専務は分析している。
ポリテクセンターから採用した二人は、それぞれ機械加工と生産管理の現場で張り切って働いている。ハローワーク経由で採用した女性も現在携わっている検査業務にとどまらず、機械加工にも挑戦したいと意欲を燃やしている。
木村精工の業績はコロナ禍でも安定して伸びており、今後は幹部候補となる人材獲得を目指し、ハローワークを中心に採用活動に取り組む。
「これからの時代は一層、人材確保が難しくなります。当社のような規模の小さい会社はなおさらです。ですから将来を見据え、少しくらい余剰になってもいいので、早めに動いて採用につなげたいと思っています」(木村専務)。
企業の発展には人材が不可欠だ。ポリテクセンターの受講生に工場を見学してもらった際、社員に協力してもらうことで、同社では現場で働く人たちの採用に関する意識も高まっており、これからは全員人事の気構えで採用活動に注力する。
企業名 | 株式会社 木村精工 |
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創業・設立 | 創業 1952年4月 |
事業内容 | 産業機械部品などの精密機械加工 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.123 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.123より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.123 |