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【巻頭特集】いつでもどこからでも電気窯の遠隔操作が可能に ~(株)青郊

印刷ページ表示 更新日:2022年10月24日更新

デジタル化設備が経営強化の強い味方に

自社の課題を解決し、強みを伸ばすための有力な手段の一つがAIやIoT、RPA、クラウドサービス等の戦略的な活用だ。とはいえ経営資源の少ない中小企業では、導入がままならないケースも多い。そこで、こうしたITツールを導入する際、経費の一部を補助するのがISICOのデジタル化設備導入支援事業だ。同事業に採択され、業務の効率化や事業拡大につなげている2社の取り組みを紹介する。

温度計を撮影する監視カメラの写真スマホで電気釜を遠隔操作する様子の写真。

鮮やかな発色に定評 手描きの風合いを再現

焼成が終わって鮮やかな色に仕上がった箸置きの写真

 「九谷焼を日常的に使ってもらい、もっと身近に感じてほしい」。そんな思いから、九谷焼を手頃な価格で提供するため、青郊が40年前に取り組み始めたのが転写シートを使った上絵付けである。従来のように手描きするのではなく、スクリーン印刷によって転写シート上に上絵を描き、これを器に貼り付け、焼成して仕上げる方法だ。
 同社では転写に適した和絵の具とその調合について、独自に研究開発し、鮮やかな発色を実現。印刷と聞くと平板な仕上がりをイメージするが、厚みを持たせて印刷し、九谷焼の上絵の特徴の一つである絵の具の盛りを表現している。また、印刷時の版を工夫して同じ色の中にも微妙な濃淡を付け、手描きの風合いをしっかりと再現しているのもこだわりだ。
 人気の豆皿をはじめ、商品ラインアップは約650点に上る。確かな技術力が評価され、有名キャラクターの絵柄を使ったOEMも数多く手掛けている。

電気窯の夜間の調整が大きな負担に

 青郊は産地でも一番の生産量を誇り、窯場では、14機の電気窯が毎日稼働している。焼成温度は最高で900℃。焼き上がるまでに約6時間を要し、同じくらいの時間を掛けてゆっくりと冷ます。
 ところで、上絵の焼成は、電気窯のスイッチを入れて後は待つだけという、単純なものではない。窯に入っている商品の形や数、気温によって、内部の温度の上がり方や下がり方が大きく違うため、品質不良を引き起こさないためには、人の手で臨機応変にコントロールする必要がある。
 しかも、同社の場合、契約電力の都合上、昼間にすべての電気窯を動かせず、夜間も焼成しているため、日中はもちろん、真夜中でもこうした作業が求められる。
 作業を一手に引き受ける北野真美恵取締役は「出掛けていても、いつも窯の様子が気になって落ち着かない。自宅は窯場のすぐ近くだが、夜間も何度も窯を確認に行かなければならず負担が大きかった」と話す。

スマホで温度の確認と上ぶたの開閉が可能に

電気釜の上ぶたの開閉状況を確認するための監視カメラの写真

 こうした状況を改善しようと、同社がISICOのデジタル化設備導入支援事業の補助金を活用し、整備しているのが、電気窯用の監視カメラと遠隔操作システムだ。
監視カメラは2種類あり、一つは電気窯に表示されているデジタル温度計を、もう一つは上ぶたの状態をその場にいなくても確認できるよう設置している。
 遠隔操作システムでは、電気窯の電源を入れたり、切ったりできるほか、上ぶたを指定した分だけ開閉し、内部の温度を調節したり、焼成時に転写シートから生じるガスを抜いたりすることが可能だ。スマートフォンやタブレットがあれば、いつでもどこからでも確認し、操作できる。
 今年2月には計19台の監視カメラを設置したほか、電気窯7機に遠隔操作システムを導入し、実証試験を開始した。9月には、展示商談会に出展するため、北野取締役が一週間、東京へ出張したが、この際もホテルなどからの遠隔操作で電気窯をコントロールすることに成功した。実証試験の結果は上々で、北野取締役は「どこにいてもすぐに温度や上ぶたの状態をチェックできるので、外出時でも安心感があった」と笑顔を見せる。

20年以上前から構想 補助金の後押しで実現

 実は今回導入したシステムの構想は、20年以上前から社内でたびたび持ち上がっていた。しかし、経営資源が限られる中、人員の増強や電気窯の買い換えなどが優先され、なかなか導入に踏み切ることができなかった。
 背中を押してくれたのがISICOの補助事業であり、北野取締役は「新たな取り組みに挑戦するきっかけを作ってもらえて、感謝している」と話す。
 構想の実現には、システム開発を手掛けた朝日電機製作所(白山市)も大きな役割を果たした。同社は青郊と九谷焼USBメモリを共同開発するなど、長年にわたって信頼関係を結び、九谷焼の製造工程についてもよく理解していた。そのため、青郊のニーズに寄り添ったシステムが完成した。
北野真美恵取締役の写真 例えば、電気窯の上ぶたの開き具合を細かく制御できるようにしたのもその一つ。また、長期の入院など、北野取締役が対応できない時に他の役員や社員が操作できるよう、誰もが使いやすいシンプルな操作画面にした。
 年内には、すべての電気窯に遠隔操作システムが導入される予定だ。「4代続いた青郊窯のものづくりを後世に残していきたい。そのためには今までと同じやり方を続けるのではなく、新たな設備の導入などで負担を軽減し、若い人にとっても魅力的で働きやすい職場をつくっていきたい」。北野取締役はそう話し、九谷焼の未来を見据えた前向きなチャレンジにこれからも力を注ぐ。

企業情報

企業名 株式会社 青郊
創業・設立 創業 大正時代初期
事業内容 九谷焼の製造・販売、九谷焼の加飾によるインテリア・工業製品 等の企画・販売

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.124
備考 情報誌「ISICO」vol.124より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.124


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