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専門家の助言を受け組織整備と人材育成 客単価のアップへ、サービスの質高める  ~(資)あらや

印刷ページ表示 更新日:2022年10月25日更新

フロム・ユーザーズ

山代温泉の老舗旅館あらや滔々庵(とうとうあん)では昨年度から、ISICOの専門家派遣事業を活用し、サービスレベルや労働生産性の向上を目指して人材育成に取り組んでいる。コロナ禍による休業などを乗り越え、客足が戻りつつある今、2024年春の北陸新幹線敦賀開業を見据えて底上げを図る考えで、成果も着々と出始めている。​

専門家の指導の下、定期的に開催している社員研修の様子

コロナ禍を跳ね返し業績は回復基調に

「御陣の間」の写真。漆塗りの柱や朱壁が美しい。 あらや滔々庵は大聖寺藩前田家から湯番頭(ゆばんがしら)の命を受けて以来、380年余りの歴史を刻んできた老舗旅館だ。源泉かけ流しの良質な温泉のほか、橋立漁港で水揚げされた海の幸、伝統の加賀野菜などをこだわりの器で提供する料理、山庭に面した落ち着きある客室、心尽くしのもてなしなどが評判で、多くのリピーターを集めている。
 新型コロナの影響によって、休業を余儀なくされた時期もあったが、感染状況の落ち着きに加え、国や県の補助事業の後押しもあって客足は徐々に戻り、客単価も上昇。月によってはコロナ以前の売り上げを上回るなど、昨年度以降、業績は回復基調にある。
 回復の足取りをさらに力強くしていくため、18代目の永井隆幸社長が課題の一つと考えていたのが、ソフト面の充実だ。そこで昨年度からISICOの専門家派遣事業を活用して宿泊施設を専門とするコンサルタントを定期的に東京から招き、サービスレベルや労働生産性の向上を目指した人材育成に取り組んでいる。

社員7人を幹部に登用 自律、自走できる組織に

7人の幹部社員の写真。組織体制や指示系統の再整備に合わせて登用された。 取り組みの一つが組織体制や指示系統の再整備である。従来、あらや滔々庵の組織は中間管理職を設けず、社長と女将、若女将という経営陣がトップダウンで社員を指揮していた。社員数が増えてきたこともあり、今年からはこれを改め、接客、調理、フロント・事務の各部門の社員の中から7人を幹部に登用。幹部にある程度の権限を委譲して、組織の意思決定をスピードアップし、現場の問題に迅速に、自律的に対応できる体制に変更した。
 組織変更には、現場の社員一人ひとりに積極的に旅館の運営に参画し、各自の成長につなげてもらいたいとの狙いもあった。
 成果は少しずつ出始めている。例えば、夕食時に販売している自家製の梅シロップを使ったドリンクメニューは社員のアイデアを具現化したものだ。もともと夏の朝食時に、寝起きの胃の働きをよくするためにお湯割りで提供していた梅シロップを活用したもので、宿泊客からも好評を得ている。
 また、宿泊客の到着時に、既製品ではなく、調理場で料理人が手作りした菓子を月替わりで提供しているのも、宿泊客に喜んでほしいと考えた社員の発案だ。

情報共有の円滑化でフォローしやすく

インカムを装着した客室係による接客の様子の写真 社員間あるいは部署間の情報共有、連携の強化にも力を入れている。インカム(※)の導入もその一例だ。あらや滔々庵では一人の客室係が二組の宿泊客を担当するのだが、力量が不足していると、一組の対応に時間がかかってしまい、もう一組への対応が疎かになることもあった。従来はこうした状況が周囲からは分からなかったが、インカムの導入によって情報をリアルタイムでやりとりできるようになり、手の空いている客室係がフォローに回れるようになった。
 「インカムは日本旅館の風情にそぐわないのではと抵抗感もあったが、使ってみると便利でサービス向上に役立っている」と永井社長は話す。
 また、かつては夕食時に担当した客室係が翌朝の見送りまで対応したが、多様な働き方を取り入れた結果、朝晩で違う客室係が付くケースも増えた。このとき、食べ物のアレルギー情報や翌日の予定などについて、しっかりと申し送りがされていなければ、宿泊客に迷惑をかけてしまうかもしれない。そのため、メモ紙だけでなくクラウドサービスを併用して情報共有できるように改善した。

整備が進むハードに見合うソフトの提供を

 これまでの取り組みを振り返り、永井社長は「社員の意識は確実に変わっている。サービスも高いレベルで平準化してきた」と評価する。
永井孝幸社長の写真 2024年春には北陸新幹線の敦賀開業が予定され、東京と加賀温泉郷は3時間ほどで結ばれる。コロナ後の反転攻勢を目指し、ハード整備に取りかかる旅館も多く、あらや滔々庵でも、長年バーラウンジとして活用していた離れを特別室に改装した。
 こうした取り組みで狙っているのは客単価の一層のアップだ。永井社長は「たとえハード面で魅力が向上しても、それに見合ったサービスが提供できれなければ、客単価は上げられない」と話し、引き続き、専門家のアドバイスを受けながら人材育成に力を注ぐ考えだ。
 また、「宿泊客の満足度を上げ、リピーターを増やしていくには優秀な人材が不可欠であり、客単価を上げてしっかりと利益を確保し、給与にも反映していきたい」と永井社長は話し、新幹線の敦賀開業直後だけでなく、長期的に集客できる旅館づくりに余念がない。

※ インカム/ヘッドホンとマイクが一体化した無線機器。施設内で複数人とコミュニケーションが取れる。

企業情報

企業名 合資会社 あらや
創業・設立 創業 1639年
事業内容 旅館業

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.124
備考 情報誌「ISICO」vol.124より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.124


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