ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 トップページ > 情報誌ISICO > 消化器系がんの有無を血液検査で判定 年間4,500件を受託するまでに成長 ~(株)キュービクス

本文

消化器系がんの有無を血液検査で判定 年間4,500件を受託するまでに成長 ~(株)キュービクス

印刷ページ表示 更新日:2023年1月18日更新

受賞者のその後にフォーカス

ISICOでは2007年から毎年、ビジネスプランコンテストを開催し、優秀な起業家の成長をサポートしている。厳しい審査を勝ち抜いた起業家がその後どのように成長したのか。記念すべき第1回のコンテストで最優秀起業家賞に選ばれたキュービクスの丹野博社長に現状を聞いた。​

90%の高精度を実現 金沢大の知見がベースに

丹野社長の写真。金沢大学が保有するガン患者の臨床データや特許を活用し、事業課に取り組んだ。

 丹野社長がコンテストで発表したのは、がんの有無を血液検査で判定する事業だ。がん患者の血液中に特異的に現れる核酸の有無や濃度といった構成パターンを調べることで、がんの有無を判別する。
 こうした検査が可能になったのは、金沢大学が保有する臨床データからがん患者に特有の核酸を特定したことだった。
 丹野社長と金沢大学はその後、胃がん、大腸がん、すい臓がん、胆道がんの4種類を血液検査で判定する検査法を世界で初めて確立し、2011年8月に解析事業をスタート。業績は堅調に伸び、現在は全国1,500カ所の医療機関で利用され、受託件数は年間4,500件に達している。
 精度は、がん患者をがんと判定する“感度”が約90%、がんにかかっていないと判定する“特異度”が約98%と極めて高い。がんの検査でよく使われるCTスキャンやMRIで見つけられないような小さながんも解析可能で、早期の発見、治療につなげることができる。検査は5ccの血液を採るだけで済むので、体への負担が少ないのもメリットだ。
 今後は乳がんなど、ほかのがんの検査への技術の応用も視野に入れている。

研究開発用機器の購入などをISICOがサポート

 丹野社長率いるキュービクスは2018年12月には白山市内で新社屋を建設。今では資本金が2億円近くまで積み上がり、従業員数は41人に増えた。とはいえ、今日までの道のりは決して順風満帆ではなく、「つなぎ融資を銀行から断られるなど、もうだめかなと思ったときもあった」と振り返る。
 そんなときでも心強い支えとなったのがISICOの支援だ。例えば、コンテストでは500万円のスタートアップ補助金を提供したほか、インキュベーション施設1室の賃料を3年間免除し、研究開発を後押しした。
 その後、ISICOの支援担当者と協力してまとめた経営革新計画が石川県に承認され、低利の融資を受けて研究開発に必要な機器を購入した。ISICOの活性化ファンド事業や次世代ファンド事業に採択されて得た助成金も助けとなった。
 ほかにも、国の事業に採択され、資金的なサポートを受けられたこと、新株予約権付転換社債を発行し、ベンチャーキャピタルなどから資金調達できたことも「ISICOのコンテストがトリガーとなった」と丹野社長は話す。

検査費用の低減を目指しすい臓がんの検査キットを開発

DNAマイクロアレイを使ったがん検査の準備の様子の写真。 ところで、冒頭で紹介した血液によるがん検査は、健康保険が適用されない自由診療であり、検査費用は1回7~10万円にもなる。というのも、4万4,000種類もの核酸を並べた「DNAマイクロアレイ」と呼ばれるガラス板など、検査は高額の検査器具を必要とするためだ。
 そこで、同社では遺伝子解析手法としては一般的で新型コロナウイルスの検査にも使われる「リアルタイムPCR法」を用いた検査キットを開発した。
 同社がまずターゲットとしたのは、他のがんに比べて発見が難しいすい臓がんだ。昨年6月には、体外診断用医薬品として製造販売承認を取得。現在は今春をめどに、健康保険の適用が受けられるよう、厚生労働省と交渉を進めている。
リアルタイムPCR法を用いたすい臓がんの検査キットの写真。 「できれば1~2万円程度で検査を受けられるようにしたい」と期待を込める丹野社長。検査キットはアメリカとEUで国際特許を取得し、海外展開も進める。今年は敷地内で4階建てのPCRセンターの建設も予定し、ゆくゆくは大腸がんなどでも同様の検査キットを開発する方針だ。

脂質異常症の原因探る新事業をスタート

原発性脂質異常症の検査に使用する次世代シーケンサーの写真。 昨年4月からは遺伝子の配列を解読する次世代シーケンサーを導入し、遺伝子の異常によって発症する原発性脂質異常症の受託検査事業を開始した。
 この事業でも強みとなるのは、金沢大学が保有する臨床データだ。一口に原発性脂質異常症と言っても細かく分けると14の疾患がある。キュービクスでは同大と連携し、病気が遺伝子の異常に起因しているか否かはもちろん、14疾患のどれに当てはまるのかを見極め、専門医の所見を付けてフィードバックする。既に30の大学病院、専門病院から検査依頼が寄せられている。
 「このようなサービスはおそらく全国でも初めて。原発性脂質異常症の患者は国内に100万人いると言われている。健康保険が使えるので、これからもっと依頼が増えると見込んでいる」(丹野社長)。
このほか、同社では新型コロナウイルスの検査に要する時間を短縮できる試薬を開発し、検査も受託している。
 「遺伝子解析を専門とする強みを生かし、ゆくゆくは世界中のがん検査キットを作ることができる会社に成長できるよう頑張っていきたい」と意欲を燃やす丹野社長。これからの研究開発、事業展開にも引き続き注目したい。

企業情報

企業名 株式会社 キュービクス
創業・設立 設立 2004年8月
事業内容 体外診断用医薬品製造販売業、製造業、医療機器製造業

企業情報詳細の表示

関連情報

関連URL 情報誌ISICO vol.126
備考 情報誌「ISICO」vol.126より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.126


月間アクセスランキングへのリンク

月間アクセスランキング
DGnet 企業情報/バーチャル工業団地/情報誌ISICO


ViVOサイトへのリンク

活性化ファンド・チャレンジ支援ファンド商品開発ストーリー集サイトへのリンク

じわもんセレクトサイトへのリンク

DGnetサイトへのリンク