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【巻頭特集】母のふるさとでIターン創業 未知の業界でも会社の信用が武器に ~(有)よしだ商運

印刷ページ表示 更新日:2023年3月22日更新

事業承継には「後継者人材バンク」の活用を
経営資源を引き継ぎ、コストとリスクを低減

ISICOが運営する石川県事業承継・引継ぎ支援センターでは、創業希望者と後継者のいない中小企業・小規模事業者をマッチングするための「後継者人材バンク」を設け、成約につなげている。既存事業を承継する場合、設備やノウハウ、取引先といった経営資源を引き継いでスタートできるため、初期投資やリスクの低減が可能だ。後継者人材バンクを活用して新たな一歩を踏み出した2人の取り組みにスポットを当てた。​

コンビニ本部などで活躍 既存事業の拡大に自信

 よしだ商運は、トラックが出発地から目的地まで荷物を運んだ後、出発地へと戻っていく際に積む荷物を手配する運送取次業を営んでいる。特に九州の運送会社とのネットワークに強みがあり、荷主となる北陸の運送会社からの信頼も厚い。
 そんな同社の事業を昨年10月に引き継いだのが柳橋大輝さんだ。柳橋さんは1990年、京都府生まれ。京都や大阪の経営コンサルティング会社や大手コンビニエンスストア本部などでキャリアを積み、母親の出身地でたびたび訪れる機会のあった石川県で、後継者不在の会社を承継する「引継ぎ創業」を目指し、事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクに登録した。
 学生の頃からゆくゆくは起業したいと考えていた柳橋さんが引継ぎ創業を選んだのは、これまでの経験を通じ、ゼロから事業を立ち上げるよりも、既存の事業を拡大していく方が向いていると感じていたからだ。そして、「事業承継するならば、経営者の高齢化が顕著な地方の方がチャンスは多い」と考え、愛着のある石川へのIターンを決めた。

柳橋社長と事業承継をサポートした北コーディネーターの写真。

業種にこだわりなし 財務内容と将来性が決め手に

 柳橋さんの相談を受け、同センターでは、譲渡を希望している会社約10社の資料を提示した。この中から数社と面談を重ね、最終的に合意に至ったのがよしだ商運だった。
 同社の創業者である芳田国昭さんは70代後半を迎え、事業承継に頭を悩ませていた。会社には芳田さんのほかに事務員が一人いるだけ。承継を希望する親族もいなかった。そこで芳田さんがまず相談に訪れたのが日本政策金融公庫だ。その後、公庫からの勧めで、連携機関であるISICOの事業承継・引継ぎ支援センターに足を運んだ。
 「業種にこだわりはなかった」と柳橋さん。企業やコンビニの経営を指導してきた経験を生かして各社の財務諸表とビジネスモデルを吟味し、固定費の少なさ、取引先からの信用の高さと将来性に引かれ、よしだ商運の承継を決めた。
 「譲渡を希望している会社を個人で見つけるのは大変なので、センターにいい会社を紹介してもらえて助かった。実際に承継を進める段階でも、税理士や中小企業診断士など、M&Aに詳しい専門家に確認しながら進めることができたのでありがたかった」と柳橋さんは振り返る。

売り上げが前年越える月も 配送エリアの拡充に注力

 柳橋さんは、よしだ商運の株式をすべて自己資金で買い取る一方、昨年10月からは芳田さんのデスクの前に座り、働きながら仕事のやり方を学んだ。商談はすべて、極めて短い電話でのやりとりだ。荷主の要望を瞬時に理解し、最適のトラックを手配するスピード感に最初は戸惑った。また、仕事に必要な情報の多くは芳田さんの頭の中にある状態だったため、これを言語化・データ化し、共有するのも難儀した。
 それでも苦労を乗り越え、事業は概ね順調に推移している。12月と1月には、売り上げが前年同期を上回った。今後は事業承継・引継ぎ補助金を活用しながら、関西・関東・中京を出発地とするトラックの確保に向け、営業を強化する考えだ。

事業の拡大に向け新たなM&Aも視野に

 「既存の事業を承継する場合、設備や人材、取引先といった経営資源を引き継いで事業を始められるため、ゼロから起業する場合に比べて初期投資を抑えることができ、ある程度の売り上げも見込めるのがメリットだ。そのため、後継者不在の企業を引き継ぎ、創業したい人が増えている」。そう話すのは、柳橋さんとよしだ商運を引き合わせ、事業譲渡契約の締結をサポートした事業承継・引継ぎ支援センターの北渡コーディネーターだ。
 ただし、承継すれば、すべてがうまくいくわけではない。北コーディネーターは「業績好調で、将来の見通しも明るいピカピカの企業が譲渡を希望するケースは少ない。むしろ、いかに磨き上げていくかという視点が大切」と言葉をつなぐ。
 その点、柳橋さんは運送エリアの拡充に加え、「事業承継・引継ぎ支援センターの協力を得て、新たなM&Aにも取り組み、事業をどんどん拡大していきたい」と意欲を燃やしており、将来が楽しみな存在だ。
 一方で、柳橋さんはM&A仲介サイトを運営するバトンズ(東京)のアドバイザー認定を受け、事業者や起業家のサポートにも力を入れる考えだ。

「後継者人材バンク」をご利用ください

後継者人材バンクの実績 石川県事業承継・引継ぎ支援センターは、事業承継(親族承継、従業員等承継、第三者承継、引継ぎ創業)に関する課題解決に向けた助言、情報提供およびM&Aマッチング支援等を行っています。
 その一環として取り組んでいるのが、後継者のいない中小企業・小規模事業者と個人起業家を引き合わせる「後継者人材バンク」事業です。有形・無形の経営資源を引き継ぐことができる上、ゼロから起業する場合に比べ、創業時のコストやリスクを低減できるのが大きなメリットです。後継者人材バンクには2017年11月の開設以降、累計で130人の起業家が登録し、
2件が成約しています。
 事業承継に向けた準備は、早期に始めることが大切です。跡継ぎ不在の中小企業・小規模事業者や創業を志す方はお気軽にご相談ください。

 お問い合わせ
ISICO 石川県事業承継・引継ぎ支援センター
TEL.076-256-1031
​https://ishikawa-hikitsugi.go.jp/

企業情報

企業名 有限会社 よしだ商運
創業・設立 設立 2003年9月
事業内容 運送取次業

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.128
備考 情報誌「ISICO」vol.128より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.128


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