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県とISICOは今年度、新事業・新産業の創出に向け、全国最大となる700億円の基金「成長戦略ファンド」を創設しました。このファンドは県内企業の支援を目的としており、運用益を活用し、DX(※1)やGX(※2)を推進する研究開発、地域資源を活用した新商品開発などを後押しします。今号では、成長戦略ファンドの概要のほか、前身である「いしかわ次世代産業創造ファンド」「いしかわ中小企業チャレンジ支援ファンド」を活用した支援事例を紹介します。
(※1) デジタルトランスフォーメーションの略。企業がデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデル、業務などを変革すること。
(※2) グリーントランスフォーメーションの略。産業・社会を化石エネルギー中心からクリーンエネルギー中心へと転換していくための活動。
ここからは6つの支援メニューについて詳しく紹介しましょう。
企業の研究開発を支援する「DX推進」「GX推進」「国プロジェクト採択への準備支援」枠は、県の次世代産業として有望な分野を集中支援してきた従来の次世代ファンドの流れを汲む支援枠です。
このうち「DX推進」枠では、データやデジタル技術を活用して競争上の優位性を確立するDXの取り組みを支援します。DX推進に役立つ新製品・新サービスの開発のほか、県内企業のモデルになるようなDXによる自社変革の取り組みも対象となります。
例えば、前者ではAI(人工知能)を活用してデジタル空間で加工中の工具や素材の状態を推定し、最適な加工動作を自動調整する工作機械の開発などを想定しています。これにより、職人の勘に頼らなくても高精度なものづくりが可能になります。
後者では、複数のメーカーと連携して金型の共同受注システムを開発し、各社が保有する設備の稼働状況を共有することで、受注機会を増加させる取り組みなどを想定しています。
「GX推進」枠では、経済と環境の好循環を生み出すGXの取り組みを支援します。GX推進に役立つ新製品・新サービスの開発のほか、カーボンニュートラル(※3)に対応するための企業連携による先進的な取り組みを支援の対象とします。
水素を燃料に走るFCV(燃料電池車)や水素ステーションでは専用の超高圧タンクが必要となりますが、水素は原子径が小さく、金属材料では透過したり、金属を劣化させたりする恐れがあるため、タンク本体は高耐圧性と高気密性に加え、金属以外の材料が求められます。例えば、こうした課題をクリアし、かつ低コストで生産するためのタンクの素材や構造の研究開発などを支援対象と想定しています。
また、カーボンニュートラルに対応する取り組みとしては、地元企業が開発した再生エネルギーに由来する水素エネルギーの活用システムを県内の複数の工場や事業所などに導入する試みなどを想定しています。
(※3) 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。
「国プロジェクト採択への準備支援」枠では、県の制度よりも補助額が大きい国のプロジェクトの採択を目指す企業を支援します。
想定される国のプロジェクトとしては、中小企業庁の「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」(補助上限9,750万円)や「中小企業等事業再構築促進事業」、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「新産業・革新技術創出に向けた先導研究プログラム」、科学技術振興機構(JST)の「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」、日本医療研究開発機構(AMED)の「医工連携イノベーション推進事業」などがあります。
成長戦略ファンドでは、これらの事業への申請に向けて必要となる、事業化可能性調査などを支援します。
「スタートアップ創出支援」枠では、製品やサービス、ビジネスモデルに先進的なアイデアや技術を導入して新たな価値を創出する企業を成長段階に応じて支援します。例えば、事業の立ち上げ段階では試作開発などに対して、成長期にはさらに競争力をアップさせるための実証試験などに対して支援します。
中小企業による新商品・新サービス開発や販路開拓を支援する「地域資源活用」「社会課題解決」枠は、地域資源の活用や産業間・異業種連携による商品開発、新ビジネス創出を支援してきた従来のチャレンジファンドの流れを汲む支援枠です。
「地域資源活用」枠では伝統的工芸品や農産品などの地域資源を活用した新商品、新サービスの開発から販路開拓までを切れ目なく支援します。新商品開発を見据えた事前のマーケティング調査、海外への販路拡大を目指す企業を対象とした支援メニューも準備しました。従業員5名以下の小規模企業者には補助率をアップして支援します。
「社会課題解決」枠は、買い物弱者や子育ての支援、地域活性化やまちづくりの推進など、社会課題の解決のための新商品、新サービス開発を後押しします。例えば、24時間スマホで受付可能な子育て支援・家事代行サービスなどを想定しています。
各支援枠の補助金額や補助率、補助期間については下記の表をご覧ください。
目的 | 対象 | 補助内容 | ||
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研究開発支援 | DX推進 | データとデジタル技術を活用して競争上の優位性を確立するDXの取り組みを支援し、県内産業を牽引する企業を創出 | ●DXに役立つ新製品・新サービスの研究開発 ●DXによる自社の変革 |
補助上限: 3,000万円 補助率:2/3 補助期間: 3年以内 |
GX推進 | 経済と環境の好循環を生み出すGXの取り組みを支援し、県内産業を牽引する企業を創出 | ●GXに役立つ新製品・新サービスの研究開発 ●企業連携による先進的なカーボンニュートラル対応 |
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国プロジェクト採択への準備支援 | 国のプロジェクト(競争的資金)獲得のために必要なFS(事業化可能性調査)支援により、県内産業を牽引する企業を創出 | ●国のプロジェクト申請に向けて必要なFS | 補助上限: 500万円 補助率:10/10 補助期間: 1年以内 |
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スタートアップ支援 | スタートアップ創出支援 | 成長段階に応じた支援を行い、スタートアップを創出 | ● 創業期の試作開発等のFS ● 成長期の実証試験等 |
FS枠 補助額:100万円 補助率:10/10 補助期間: 1年以内 アクセラレーション支援枠 補助額:500万円 補助率:3/4 補助期間: 2年以内 |
新商品・ 新サービス 開発支援 |
地域資源活用支援 | 伝統的工芸品や農産品などの地域資源を活用した新商品・新サービスの開発や販路開拓を支援し、県内企業の競争力を強化 | ● 地域資源を活用した新商品・新サービスの開発および販路開拓 | 下表に詳細 |
社会課題解決支援 | 地域の社会課題解決のための新たなサービスの開発により県内企業の新たなビジネスモデルを生み出す | ● 地域の社会課題解決のための新商品・新サービスの開発および販路開拓 | 下表に詳細 |
新商品・新サービス開発支援事業メニュー詳細
事業名 | 補助限度額 | 補助率 | 補助 期間 |
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地域資源活用 | 中小企業等による地域資源活用 新商品・新サービスの開発・販路開拓支援 |
300万円 | 2/3 | 3年以内 |
小規模企業者(※)による地域資源活用 新商品・新サービスの開発・販路開拓支援 |
150万円 | 3/4 | 3年以内 | |
中小企業等による地域資源活用 新商品・新サービス開発に係る事前調査支援 |
【企業・組合等】 50万円 |
定額 | 1年以内 | |
【4者以上の グループ】 100万円 |
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海外に向けた商品の開発・改良・販路拡大支援 | 500万円 | 2/3 | 3年以内 | |
社会課題解決 | 中小企業等による社会課題解決に向けた 新商品・新サービスの開発・販路開拓支援 |
300万円 | 2/3 | 3年以内 |
小規模企業者(※)による社会課題解決に向けた 新商品・新サービスの開発・販路開拓支援 |
150万円 | 3/4 | 3年以内 |
(※) 従業員5名以下。社会課題解決メニューで申請する場合は、地域資源の活用は要件としません。
企業名 | 公益財団法人 石川県産業創出支援機構 |
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創業・設立 | 設立 1999年4月1日 |
事業内容 | 新産業創出のための総合的支援、産学・産業間のコーディネート機関 |
関連URL | 情報誌ISICO vol.130 |
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備考 | 情報誌「ISICO」vol.130より抜粋 |
添付ファイル | |
掲載号 | vol.130 |