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【巻頭特集】CASE01 完全バリアフリー型の貸し切り風呂  助言受け、補助金活用して事業化 ~(株)アルカディア

印刷ページ表示 更新日:2024年6月14日更新

国が設置する無料の経営相談所 課題解決へ専門家が道筋照らす
石川県よろず支援拠点

国がISICO内に設置する「石川県よろず支援拠点」が開設10周年を迎えた。同拠点では、中小企業・小規模事業者からの多岐にわたる経営相談に対し、中小企業診断士をはじめ各分野の専門家がきめ細かく対応し、課題解決をサポートしている。今回の巻頭特集では、支援した2社の事例とチーフコーディネーターからのメッセージを紹介する。​

障害者も楽しめる温泉10種類から選べる浴室

「やさしいお風呂」の写真。入浴介護リフトを備え、車椅子の利用者も入浴を楽しめる アルカディアが運営する小松グリーンホテルにある天然温泉の貸し切り風呂「十湯物語」が好評だ。その名の通り、植物が青々と茂り、子どもが遊べる滑り台も備えた「ジャングル」、露天風呂付きで山並みを一望できる「白山」など、趣向を凝らした10の浴室を備える。
 さらに特徴的なのが浴室のバリアフリー対応だ。例えば「やさしいお風呂」と名付けた浴室は、段差のないフロア、手すりの設置はもちろん、入浴介護リフトが壁に備え付けられ、車椅子の利用者や重度の障害者も温泉を楽しむことができる。
 また、「金箔」「漆」と名付けられた浴室では、半身不随となり、浴槽をまたいで入れない障害者が腰掛けたまま、脱衣所から浴槽まで移動できる台が設置できるよう工夫されている。安全に入浴できるよう、浴槽は深さ20センチから3段階で徐々に深くなる形状となっている。
 どの浴室も源泉かけ流しで、よく温まり、肌もすべすべになると評判だ。週末には順番待ちができるほどの人気ぶりで、2022年3月のオープン以降、同社の新たな収益の柱となっている。

コロナで売り上げ7割減 貸付金の返済に不安

 十湯物語の整備を加速させる役割を担ったのが、石川県よろず支援拠点である。
 話は2020年にさかのぼる。その前年まで、小松グリーンホテルは平均稼働率が約8割と忙しい状況が続いていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって経済活動が停滞すると、売り上げがそれまでの3割ほどに落ち込んだ。
 コロナ禍を何とか乗り切ろうと畑徹郎社長は日本政策金融公庫から新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けた。この貸付金の返済が始まるのは3年後である。とはいえ同ホテルは客室数が46と規模が小さく、たとえコロナが収束し、稼働率が回復したとしても返済が滞るのではと不安が募った。
小松グリーンホテルの外観写真。 返済に向け、新たな収益源として思い浮かんだのが、自慢の天然温泉を生かした貸し切り風呂を拡充する構想だった。3密を避けるには貸し切り風呂はぴったりだ。同ホテルでは大浴場と貸し切り風呂3室を備えた公衆浴場を運営し、好評を得ており、稼働率の低い2階の会議室を改装して浴室を増設すれば、新たな収益の柱になると期待できた。
 しかし、貸し切り風呂を整備するには特別貸付だけでは足らない。追加の資金を調達するため畑社長は商工中金に相談。融資のためには経営改善計画が必要であり、計画策定に向け商工中金の担当者が紹介したのが石川県よろず支援拠点だった。

福祉施設を見学し、計画をブラッシュアップ

子ども連れに人気の浴室「ジャングル」の写真。植物が茂り、滑り台も付いている。

 相談を受けた石川県よろず支援拠点のコーディネーターは、コロナ禍でダメージを受けた中小企業のチャレンジを支援するため新設された事業再構築補助金の活用を提案した。畑社長は融資よりもメリットが大きいと判断し、補助金獲得にチャレンジすることに決めた。
 貸し切り風呂はウィズコロナ時代にぴったりの施設だが、補助金の申請には従来にない新たな事業コンセプトが必要だった。そこで畑社長が打ち出したのが完全バリアフリー型の貸し切り風呂だ。「母親の足が不自由だったこともあり、障害者でも楽に入れる風呂を作ってあげたいと思っていた」(畑社長)ことが発想の原点だった。
 事業計画の策定にあたって畑社長は石川県リハビリテーションセンターを見学し、車椅子の利用者や半身不随の人の入浴の仕方などを学んだ。また、「視覚障害者でも同行者の説明を心のスクリーンに映して見る。だから浴室を無機質な空間にしてほしくない」との声を聞き、バリエーション豊かな浴室を考案した。
脱衣所から浴槽まで座ったまま移動できる「漆」の写真。 「事業再構築補助金の申請書はとても難しく、書いていて分からないことがたくさんあった。そのたびにコーディネーターに相談に乗ってもらった」と振り返る畑社長。苦労のかいあって第1回の公募で採択された。
 その後、1階に3室あった貸し切り風呂を1室にして、重度障害者でも入れる完全バリアフリー対応にした。2階の会議室は9室の貸し切り風呂に改装した。

オープン4カ月後に収益が黒字化

 テレビCMやタウン誌、SNSなどでの情報発信が奏功し、客足は好調だ。高齢者や障害者はもちろん、小さな子どものいる夫婦などに喜ばれ、富山県や福井県から通う常連客もいる。
畑徹郎社長の写真。 現在、1日当たりの全室平均回転率は4.3にまで上昇している。改装前にほぼ稼働していなかった会議室が、月数百万円を売り上げるスペースに変わり、オープン4カ月後には収益が黒字に転じた。資金繰りも改善し、賃上げも実現した。
 石川県よろず支援拠点には今でも月1回、必ず足を運んで状況を報告し、助言をもらっている畑社長。「高級旅館で長く勤務した経験を持つコーディネーターが、的確で具体的なアドバイスをしてくれる」と笑顔を見せ、これからも企業体質の強化を見据え、同拠点をフル活用する考えだ。

 

企業情報

企業名 株式会社 アルカディア
創業・設立 設立 2012年4月
事業内容 ビジネスホテル・公衆浴場・貸し切り風呂の運営

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.135
備考 情報誌「ISICO」vol.135より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.135


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