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【巻頭特集】CASE02 自動放射線計測システムが新たな事業の柱へ ~(株)松浦電弘社

印刷ページ表示 更新日:2024年10月7日更新

卓越した専門性や技術力でニッチトップを目指せ!

独自の技術で特定の分野を席巻し、全国シェア1位を誇るニッチトップ企業。石川県には、そんな企業が数多く存在する。専門性や技術力に磨きをかけ、シェア拡大を目指す県内企業を後押ししようと、ISICOでは石川県の「ネクストニッチトップ企業育成事業」を通じ、成長が期待される企業を支援している。支援対象に選ばれ、奮闘を続ける2社にスポットを当てた。​​

能登半島地震の発生後常設機の不具合をカバー

 今年1月1日に発生した能登半島地震。この地震の影響で、志賀原子力発電所の周辺に設置されたモニタリングポスト(放射線監視装置)96カ所のうち、16カ所が停電や通信障害により測定不能に陥った。モニタリングポストは住民の避難などを判断するため、放射線量を測る重要な装置だ。データが途絶えれば、状況の把握や的確な判断に支障をきたす。
 こうした状況の中、真価を発揮したのが、松浦電弘社が開発した持ち運び可能な自動放射線計測システム「KURAMA(クラマ)」だった。このKURAMAは分解したパーツを車に積んで運び、測定したい場所で組み立てて使用する。電力が供給されなくても、1週間にわたって2分ごとにデータを取得、送信できるバッテリーを内蔵する。
 昨年11月、災害時の現地対策本部となる石川県志賀オフサイトセンターに同社が納入したもので、測定不能だったモニタリングポストが復旧するまでの間、衛星回線を使ってデータを送り続けた。松浦隆弘社長は「遅延なく動作し、災害時にもしっかりと機能することが証明できて、評価が一層高まった」と話す。

自動放射線計測システム「KURAMA」の実証試験スペースの写真

京都大が開発した測定装置を量産化

 同社はそもそも、自動車や半導体、食品、医薬品の製造現場などで活躍する自動化システムや検査機などをAIやロボットを駆使して製作するシステムインテグレーターだ。例えば、菓子職人の技をAIに学習させ、自動でバウムクーヘンを焼く機械は100台を超える納入実績を誇る。
 そんな同社がKURAMAを開発、製造したきっかけは2011年の東日本大震災だった。KURAMAの組み立て風景の写真東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大気中に放出された放射性物質の影響が心配される中、誰でも簡単に放射線量を測定できる装置を京都大学複合原子力科学研究所が開発した。その量産化という重要な使命を託されたのが松浦電弘社だった。
 この装置には米ナショナルインスツルメンツ社のソフトウェアが使われており、松浦電弘社は同社から西日本で唯一のゴールドアライアンスパートナーとして認定を受けていた。技術力を高く評価するナショナルインスツルメンツ社が量産にあたって推薦したのが松浦電弘社だったのだ。

車に載せて走るだけで各種情報をサーバーへ

 当時、開発したKURAMAは走行サーベイシステムと呼ばれるタイプだ。車のシガーソケットに差し込むと自動的に計測が始まり、走行しながら放射線量とGPSの位置情報をサーバーに蓄積する。
 松浦電弘社では、これまで自動運転車の開発時にエンジンの回転数など、さまざまなデータを計測し、サーバーに蓄積するシステムを作り上げた実績などを生かして製品化を実現。2011年11月には原子力研究開発機構や福島県に計150台を納入した。国が発表した空間線量率の分布図にも、この装置によって収集したデータが活用された。
 その後は国や自治体の要望に応じて、歩きながら測定できるタイプ、トラクターに搭載できるタイプ、固定して置けるタイプなど、ラインアップを拡充した。ドローンに搭載できるタイプもあり、今年は大林組などと共同で、除染に伴って発生した土壌や廃棄物の中間貯蔵施設、仮置き場を無人で測定する技術の開発に取り組んでいる。
 原子力発電所が立地する自治体やその周辺の自治体を中心に、これまでに累計で約600台を納入。年によってばらつきはあるが、2024年9月期は売り上げの35%を占めるなど、会社の主力の一つに成長した。

アフターフォロー体制やラインアップを強化

松浦隆弘社長の写真

 さらに売り上げを伸ばし、シェアを拡大するため、2021年度からは県の「ネクストニッチトップ企業育成事業」の補助金を活用し、PR動画の制作や自治体の関係者らを対象とした研究会を開催するなど、認知度アップに注力する。
 また、何かトラブルがあった際に素早く駆けつけて修理できるよう福島県などで協力会社とのネットワークを強化するほか、他社製品にはあって自社にはなかった測定上限が100ミリグレイのモニタリングポストを今年中にラインアップに加えるなど、業界での存在感を高めようと着々と手を打つ。
 「他社製品に比べ、コンパクトで安く、どんな環境でも安定して測定できる上、メンテナンスも簡単」とKURAMAの優位性に自信を見せる松浦社長。さらなる販路開拓に向け、これからも挑戦が続く。

企業情報

企業名 株式会社松浦電弘社
創業・設立 創業 1968年9月
事業内容 産業用省力化装置、計測器、検査機などの設計、開発、製造

企業情報詳細の表示

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関連URL 情報誌ISICO vol.137
備考 情報誌「ISICO」vol.137より抜粋
添付ファイル
掲載号 vol.137


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